研究課題
ビジョンシステムに適用可能なセンサスケジューリングアルゴリズム構築を下記の三通りのアプローチで行った.まず,現在までに提案したセンサスケジューリングアルゴリズムの理論的な拡張によりカメラスケジューリングアルゴリズムの構築を図った.既存アルゴリズムはセンサの観測モデルが状態について線形であることを仮定している.ビジョンの観測モデルは非線形システムであるため,線形近似によりアルゴリズムの拡張を行いビジョンシステムへの適用を図った.線形近似を使用しているためこのアルゴリズムは,システムパフォーマンスの最適性は保証できない.しかし,どのような観測モデルを有するビジョンにも適用可能であり,広範なシステムに応用可能であり実用性が高い.数値シミュレーションにより,最適なシステムパフォーマンスに近い性能が得られることを確認した.つぎに,カメラの配置に一定の条件を課すことで,提案したセンサスケジューリングアルゴリズムがビジョンシステムに適用可能であることを示した.このアルゴリズムは,カメラ配置に制約を課すが,システムパフォーマンスの最適性を保証することができる.以上の二つのアプローチは,制御対象のモデルが既知であることを前提としている.実問題においては,制御対象のモデル同定が困難であることも多い.そこで,モデルが得られないことを前提としたスケジューリングアルゴリズムの構築を行った.制御方法として画像ベース制御法を想定した.数値シミュレーションにより画像ノイズの制御性能に与える影響を低減できていることを確認した.以上の三つのアプローチによって,ほぼあらゆる状況に適用可能なスケジューリングアルゴリズムの構築に成功した.実問題に対しては,システムや環境によって,上記の三種類のアルゴリズムを使い分けが重要となる.
2: おおむね順調に進展している
飛行空間全体を観測できるように20台のカメラを設置し,それらをネットワークで結合し,ビジョンシステムを構築した.用いたカメラはGrasshopperとwebカメラである.高価な高フレームレートカメラの設置台数を減らすため,アクティブカメラをビジョンシステムに組み込む予定だったが,安価なwebカメラを用いて,飛行体の制御が成功したため,アクティブカメラ導入の必要性が無くなった.今後は無線通信カメラの導入を図り,より多様な状況が再現可能なシステムの構築を図る.「研究実績の概要」に記載した通りスケジューリングアルゴリズムの構築は順調に進んでいる.ビジョンシステムの通信遅れと個々のカメラの観測時刻の不一致(非同期)は,アルゴリズムに組み込まれていないが,センサシステムに非同期が存在する場合に得られる制御性能についての理論的解析を行うことができている.さらに,当初予定していなかった制御対象のモデルが同定困難である場合にも適用可能なアルゴリズムを構築している.シングルロータヘリコプタのモデル導出まで至らなかったが,二重反転ロータヘリコプタのモデル導出を完了している.この結果,平成24年度に行う予定であったスケジューリングを伴わない制御実験が終了した.さらに,風外乱を考慮した制御実験を行い,制御器のロバスト性を確認した.以上の進行状況を総合的に考慮して,おおむね順調に研究が進行していると判断した.
構築したビジョンシステムによって得られた結果を元に,カメラのフレームレートのばらつき,通信遅れを考慮したスケジューリングアルゴリズムの構築を行う.さらに,平成23年度に構築した制御対象のモデルが未知である場合に適用可能なスケジューリングアルゴリズムの改良・検証を行う.このアルゴリズムの構築は,計画書提出時には予定されていなかったが,実問題では制御対象のモデル同定が困難な場合が多くあり重要性が高いと判断した.高価な高フレームレートカメラの設置台数を減らすため,アクティブカメラをビジョンシステムに組み込む予定だったが,安価なwebカメラを用いて,飛行体の制御が成功したため,アクティブカメラ導入の必要性が無くなった.そのため,アクティブカメラの動作計画の策定は行わない.実験により,ビジョンシステムの非同期 (観測時刻の不一致) が制御性能に与える状況が大きいことが分かった.平成23年度に行った非同期センサシステムの理論的性能解析では,システムが二つのセンサから構成されると仮定していた.今後は,この仮定を無くし,より一般的なシステムに対して性能解析を行う.さらに,解析結果を実験によって検証する.以上,今後の研究の推進方策について研究計画調書に記載の計画と異なる点に焦点をあて説明した.
現時点で,三件の国際会議発表を予定しているため,研究費全体に占める旅費等の支出割合が増えている.規模を拡張して数値シミュレーションを行うため,環境構築のためのPC,ソフトウェアの費用を計上している.その他は,おおむね計画書提出時の予定通りである.
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
IEEE Trans. on Automatic Control
巻: Vol. 56, No. 8 ページ: 1900-1905
SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
巻: Vol. 4, No. 3 ページ: 249-253