研究課題/領域番号 |
23760200
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荒井 翔悟 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (80587874)
|
キーワード | センサスケジューリング / 制御 |
研究概要 |
カメラスケジューリングについて,本年度は下記に記載の理論的・実験的な成果を得た。以下,この2項目について記述する。 多数のセンサから構成されるネットワークセンサシステムは観測対象の時空間情報の獲得に有効である。これまでシステムの性能を発揮するためには,多数のセンサの観測時刻の同期が重要であると考えられてきた。特に,多数のカメラから構成されるネットワークセンサシステムでは,撮像時刻を同期させて,対象の状態(位置・姿勢)を推定するアルゴリズムの開発に多大な尽力がなされてきた。しかし,同期には専用のプロトコルや装置を必要とし導入コストは高い。この問題に対して,同期を行わない場合のほうが性能向上につながるケースが存在することを理論的に証明し,その条件をシステムパラメータを使って特徴付けた。本年度はこの理論的成果を現代制御理論の代表的成果の一つであるLQG制御系へと拡張できることを示し,実システムへ適用するための理論的基盤となる成果を上げた。 さらに,以上の理論的成果を実験ではじめて確認し,実システム適用への基盤となる実験的データを示すことに成功した。複数のカメラをネットワークで構成し,ネットワークセンサシステムを構築した.制御対象として無線誘導の無人小型ヘリコプタを使用した。小型ヘリコプタは外乱の影響を受けやすいため,センサによる計測・得られた計測データを用いたフィルターによる状態推定が重要となるので,ネットワークセンサシステムの性能評価に適した制御対象である。 また,風外乱に対してロバストな制御系の構築を前年度に引き続き実施し,実験によってそのロバスト性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記載したとおりビジョンシステムの画像処理ソフトウェアの開発を行った。開発したソフトウェアを実験によって検証した結果,シングルカメラにて小型ヘリコプタの自動飛行が可能であることを確認した。飛行に必要なカメラ台数は画像処理ソフトウェアの性能に依存するため,開発したソフトウェアの性能は必要十分であると結論づけた。 平成24年度で課題となっていたビジョンシステムの非同期(観測時刻の不一致)が制御性能に与える影響について理論的に解析し,その解析結果を裏付ける実験データを初めて示すことに成功した。 さらに,本年度は予定されていたスケジューリングを伴わない飛行制御実験を予定通り終了した。平成23年度に引き続き,風外乱がある環境での飛行実験を行い,制御系のロバスト性を確認した。 構築された一連のアルゴリズム検証のため,計画書に記載の小型ヘリだけでなく,3kg程度のペイロードを有する比較的大型のマルチコプタを用いた実験を次年度に計画することとした。本年度は,そのための準備として,マルチコプタの選定,および基礎的な制御系設計も行なっている。 以上の進行状況を総合的に考慮して,おおむね純良に研究が進行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までに構築されたアルゴリズムを利用して,小型ヘリの自動制御実験を行う。ヘリの制御目的として,着陸,ホバリング,誘導,着地,風外乱下での飛行の5つを想定する。研究計画書では,背面飛行を想定していたが,小型の二重反転ロータヘリコプタでは,背面飛行が動力学的に困難であることが実験によってあきらかになったため,背面飛行は目的から除外している。本年度は研究が進み,風外乱環境に適用可能な制御系の構築を完了したため,風外乱下でのアルゴリズムの検証を目的に追加した。 構築したアルゴリズムの汎用性を確認するため,3kg程度のペイロードを有する比較的大型のマルチコプタを用いた実験も追加で行う予定である。 一連の実験終了後に,アルゴリズム開発と実験で得られた知見を元に,カメラスケジューリングについて系統的な総括を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」に記載したとおり,大型のマルチコプタを使用し追加実験を行うことにしたため,関連する物品費の割合が増加する予定である。 その他の使用計画については,おおむね計画書提出時の予定通りである。
|