研究課題/領域番号 |
23760201
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
林 隆三 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80505868)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 交通機械制御 / 自動車 / 予防安全 / 障害物回避 / 自動運転 |
研究概要 |
本年度の目的である,従来の障害物自動回避システムにおける「円弧を用いた回避軌道では実際の車両軌道との誤差が無視できず,障害物が回避可能であるかどうかの事前判断の精度が良くない」という問題点に対する改善として,まずは,クロソイド曲線などの高度幾何学曲線による回避軌道の定式化を試みた.しかし,研究の結果,クロソイド曲線のような高度幾何学曲線では,回避軌道の導出方程式が解析的に求解不可能な積分式として表されることとなり,そのため,回避軌道は数学的に求解不可能であるということが判明した.そこで,代替策として,回避軌道全体を高度幾何学曲線により求解するのではなく,任意の目標位置に確実に到達するように操舵パターンを定めることで,車両軌道の誤差の低減を図ることを試みた.まず,実車で実現可能な操舵パターンが台形状の操舵角波形になることから,台形状の操舵パターンにより発生する車両の軌跡を解析的に導出した.次に,車両軌道を円弧軌道と仮定し,最小の定常横加速度で障害物を回避できる車両軌道を幾何学的に求め,この車両軌道において障害物と最接近する位置座標を求めた.そして,この両者を用い,台形状の操舵パターンによりこの最接近位置を通過するように操舵パターンを逆算することで,実車で実現可能な操舵による障害物の自動回避を実現するという方法を提案した.理論検討の結果,提案した手法により実際に最適な操舵パターンを導出することが可能であり,また,数値シミュレーション検討の結果,提案した手法により自動操舵における軌道誤差が小さくなることが示された.さらに,提案する手法の有効性を検証するため,小型電気自動車を用いた実証実験を計画し,実験車両に提案する手法を実装し,実験の準備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,本年度に実証実験まで完了させる予定であったが,震災等の影響により研究への着手が遅れたため,実証実験は未完である.しかし,実験準備はすでにほぼすべて整っており,4月中に完了見込みである.実証実験の準備と実験の実行は研究協力者により行われるので,次年度の研究は計画通りに開始される予定であり,研究全体の達成に支障はないと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度提案した手法の実証実験を行うとともに,同時に,当初の計画通り,カーブなど直線路以外の形状の道路における本手法の適用法の検討を開始する.まずは,道路境界を直線ではなく任意の曲線として扱い,道路境界曲線の特徴点を抽出する手法を検討する.そして,その特徴点をぎりぎりで通過できる回避軌道の幾何学的な導出を行う.これらをもとに,曲線路において適用できる障害物の自動回避手法を提案し,数値シミュレーションと実車実験によりその有効性・妥当性を実証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では,本年度,数値シミュレーション用のソフトウェアとして,マルチボディダイナミクスソフトウェア(CarSim ver.8)を購入予定であったが,本年度は,自作のシミュレーションプログラムによりシミュレーションを行うことが可能であったため,購入を見送った.しかし,次年度の研究ではシミュレーション条件などが複雑化するため,CarSim ver8の購入が必要であると思われる.また,国際学会発表を行う予定であったが,日程上の都合により参加を取りやめた.その分の研究費は,次年度に調査・研究旅費として執行する予定である.次年度は高額物品の購入は予定しておらず,次年度の研究費は主に実験車両の改造費や,数値シミュレーションや実験における消耗品費,また,学会発表(2回)の旅費や論文投稿料として使用する予定である.
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