平成23年度は,従来の障害物自動回避システムにおける車両の軌道追従性の改善手法について検討した.台形状の操舵パターンにより発生する車両の軌跡を解析的に導出することにより,円弧軌道の場合に障害物と最接近する位置座標を車両が通過するための台形状の操舵パターンを逆算した.数値シミュレーション検討の結果,提案した台形操舵パターンにより自動回避における軌道誤差が小さくなることが示された.さらに,提案した手法を小型電気自動車に実装し,検証実験の準備を行った. 平成24年度は,まず,前年度提案した台形操舵パターンの有効性検証実験を行った.その結果,提案した手法を用いた場合,従来手法よりも正確に目標軌道に追従することが可能となり,提案した自動操舵回避システムの事故防止効果が高まった. 次に,障害物(歩行者)の加速や減速などの挙動変化に対応できるようにするため,自動操舵回避の途中からの補正軌道を定式化し,障害物の回避軌道を常に更新し続ける操舵角制御アルゴリズムを提案した.さらに,数値シミュレーションおよび実車実験により,提案する手法の有効性を示した. 平成25年度は,提案した障害物自動回避システムの一般乗用車への適用性についての検討を行った.車両運動解析ソフトウェアを用い,提案したシステムを一般乗用車に実装した場合の緊急自動回避の数値シミュレーションを網羅的に行い,その結果から,自動操舵用モータの最大トルクおよび許容回転速度と回避成功率との関係を定量的に明らかにした.また,この結果から,操舵モータに使用する減速機の最適なギヤ比について明らかになった. 以上のように,本研究では,前方障害物を操舵により回避する緊急自動衝突回避システムについて,予防安全システムとしての実用化のための改良を行い,その有効性を示した.さらに,一般自動車への適用を念頭においた有効性検討も行った.
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