研究課題/領域番号 |
23760203
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
田浦 裕生 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (20334691)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | すべり軸受 / ロータダイナミクス / オイルホイップ / 軸受油膜 / 安定性 / 動特性 / 油膜モーメント / 傾斜油膜係数 |
研究概要 |
・実験面においては,傾斜油膜係数の測定法を新たに開発を行った.これまで多くの実績のある並進運動に関する油膜係数の測定法をベースとした.同法は,回転のみが許された軸上に軸受を油膜を介して浮上させた試験機を用いて外部から周期的な加振力を加えて油膜係数の値を推定するものである.傾斜油膜係数に適用するため,加振装置を追加して,軸受を強制的に傾斜運動させるとともに,その際に生じる油膜のモーメントを測定できるように改良した.・改良した軸受油膜動特性試験機を駆動および測定するための計測プログラムの構築を行った.・理論面では,ジャーナル軸受の一種であるティルティングパッドジャーナル軸受(TPJB)で支持された弾性回転軸を対象として,傾斜油膜係数が回転軸の安定性に及ぼす影響を解析した.その結果,回転軸の安定性向上には,軸受取付け方法を,軸と軸受との相対的な傾斜を無視できる軸受可傾斜取付けとし,予圧係数を高めることが最も有効な対策であると結論された.また,軸と軸受との相対的な傾斜を無視できない軸受不傾斜取付けとなる場合には,軸の曲げ剛性を高める,軸受幅径比を低下させるなどの対策は有効であるが,予圧係数は運転条件を確認して適切に設定することが必要となることを明らにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・開発した傾斜油膜係数の測定法を使用して真円ジャーナル軸受を用いた試験を実施したが,傾斜油膜係数の測定では並進運動に関する油膜係数の測定よりも高い振動レベルが要求されるため,軸振動による影響の除去がうまくいかず満足いく結果が得られなかった.このため,予定していた真円ジャーナル軸受に対する傾斜油膜係数の定性的な特性把握が十分できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
・既存の軸受動特性試験機の軸振動が想定よりも大きかったので(傾斜油膜係数の測定では並進運動に関する油膜係数の測定よりも高い振動レベルが要求される)軸振動低減の改良を優先させて,傾斜油膜係数の測定への改良は最低限に留め,予定していた一部部品の購入を先送りした.平成24年度は平成23年度に実施できなかった装置の改良を行い,基準とする真円ジャーナル軸受の測定を行い,傾斜ばね係数,傾斜減衰係数の基本性能を明確にする.・ジャーナル軸受の軸受面形状は,すきま比,幅径比,円弧数,予圧係数,オフセット係数などの形状パラメータにより決定される.本研究では,各形状パラメータを系統的に変化させた際の傾斜油膜係数を数値解析により求め,これより軸受面形状が傾斜油膜係数への影響を明らかにすることとする.いくつかの条件では,動特性試験機を用いて,数値解析結果の検証実験を行う.以上の結果をまとめ,安定解析等に利用できるように傾斜油膜係数のデータベースを作成する.・傾斜ばね係数4項,傾斜減衰係数4項より構成される傾斜油膜係数は,各項がどのように関係し,主にどの項が安定性等に影響を与えるのかなどの点で,見通しが悪いことから,ジェフコットロータを対象にして,傾斜油膜係数を考慮した場合において,ラウス-フルビッツの安定判別法をベースにした線形安定限界速度式を導出し,不安定機構を明らかにするとともに,8個の傾斜油膜係数の各項が安定性におよぼす影響を明確にする.・すべり軸受で支持された弾性ロータの安定性を確認するため,弾性ロータ試験機を設計・製作する.
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次年度の研究費の使用計画 |
・本年度実施できなかった軸受動特性試験機の改良を実施する.・ジャーナル軸受の軸受面形状の形状パラメータを実験的に確認するための,各形状パラメータを系統的に変化させた試験軸受を作成する.・すべり軸受で支持された弾性ロータの安定性を実験的に確認するために弾性ロータ試験機を設計・製作する.この際測定用の変位計等のセンサ等を購入する.また,軸受動特性試験機と弾性ロータ試験機では軸径が異なるため,試験軸受も再度製作する.
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