ジャーナル軸受で支持された回転軸では,ジャーナルと軸受が動的に傾斜する場合の影響はこれまであまり考慮されておらず,その回転軸の安定性には不明な点が多い.本研究では,ジャーナルと軸受が動的に傾斜した場合に発生する油膜モーメント(および傾斜油膜係数)が回転軸の安定性に及ぼす影響を明らかにし,より高い安定性を維持するための軸受設計指針を導出することを目的とし,そのため,軸受面形状が傾斜油膜係数に及ぼす影響および傾斜油膜係数が回転軸の安定性に及ぼす影響を,それぞれ実験,理論に検討した. 本年度は,軸受動特性試験機の精度向上を主目的に試験機の改良を実施した.測定方法の根本的な見直しを行った結果,軸の変動を無視した解析を行っており,これが測定精度向上を妨げていることが明らかとなった.そこで,軸受に加速度計を設置して,直接軸受の加速度を取得することとし,装置の設計および測定プログラム・解析プログラムの構築を行った. 一方,理論面では実機に広く使用されている二円弧軸受,三円弧軸受,四円弧軸受,ティルティングパッド軸受を対象として,これらの軸受で両端を支持された柔なジェフコットロータの安定解析を行い,広範な運転条件における安定限界線図を作成し,傾斜ばね係数,傾斜減衰係数が軸・軸受系の安定性の及ぼす影響を調べた.その結果,傾斜ばね係数,傾斜減衰係数は,ゾンマーフェルト数が小さな場合,予圧係数に依らないが,ゾンマーフェルト数が大きな場合には,予圧係数が増加するほど大きくなることが明らかとなった.また,二円弧軸受は,予圧係数が高い場合に安定性が,他の形式の軸受に比べて非常に高くなることが各種軸受の安定限界線図の比較より示され,柔な回転軸において広い安定領域を確保するには,予圧係数を高く設定した二円弧軸受を採用するのが最も適当であることが明らかとなった.
|