最終となる本年度は,3つの内容(圧電素子,電磁アクチュエータ,電場応答性高分子)について研究を行った.まず圧電素子に関して,計算機によりシャント回路を実現する仮想アドミタンスの回路に関する研究を進めた.仮想アドミタンス回路にはこれまで電流アンプを用いていたが,負性キャパシタを実現する際などにはコントローラが厳密にプロパーにならないため,電荷アンプを用いると都合がよいと予想された.接地型電荷アンプを用いた仮想アドミタンス回路の作製ならびに負性キャパシタを用いたシャント回路の安定性について検討を行った.その結果,負性キャパシタを用いた場合には,従来の研究では無視されていた圧電素子の寄生抵抗の影響によって必ず不安定化する場合がありえることがわかった.そして,安定となる負性キャパシタには追加で負性抵抗が必要になることを明らかにした.これらの研究成果は国内学会と国際会議にて報告を行った. さらに,シャント回路の適応化を目指して研究を行い,負性キャパシタと適応制御を組み合わせた新たな手法を開発した.提案手法はセルフチューニングレギュレータの枠組みに基づくものであり,学会発表と論文投稿に向けた準備を進めている. 電磁アクチュエータについては,アクチュエータのパラメータを推定する手法について研究を行い,圧電素子で得られている知見をもとにセンサを用いずにパラメータを推定する手法を開発した.この内容についても学会発表と論文投稿に向けた準備を進めている. 最後に,電場応答性高分子のひとつであるIPMCアクチュエータについては,銅電極から水中に溶け出したCuイオン交換によってアクチュエータが大きく変形するという現象を発見した.これは振動制御に直接関連する成果ではないが,高分子アクチュエータの電気機械変換に関わる現象についての新たな知見であり,論文として成果を報告した.
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