本研究では、鋳造業で用いられる取鍋傾動式自動注湯ロボットの高速高精度化を実現する注湯流量制御をベースとした注湯制御システムを開発した。まず、自動注湯ロボットではロードセルを用いて取鍋から流出する液体の流出重量の計測が可能である。そこで、計測流出重量から拡張カルマンフィルタを用いて注湯流量を推定する注湯流量推定システムを開発した。そして、推定注湯流量を所望の流量に追従させる注湯流量制御を提案した。本研究では、非線形特性を有する制御対象に2自由度制御システムを構成できるフラットネスベースド制御を用いて、注湯流量制御を構築している。注湯実験により、開発した注湯流量制御システムは、スラグ付着などの外乱が生じた場合でも注湯流量の高精度化が実現できることを確認した。更に、開発した注湯流量制御をベースとした注湯充填重量制御を開発した。その結果、流量のばらつきが減少し、充填重量の高精度化を実現した。特に、従来の充填重量制御では、目標充填重量が少ない場合の充填重量の高精度化が困難であったが、注湯流量制御に基づく充填重量制御によって、少ない目標充填重量での高精度化が可能となった。 また、カメラシステムによる取鍋から流出する液体の落下位置計測システムを開発し、流出液体の落下軌跡モデルを提案した。落下位置計測実験により、従来の落下軌跡モデルでは出湯口での液体断面収縮による流速増加が考慮されていないために、実際の落下位置よりも手前に落下することが確認された。そこで、出湯口での断面収縮による流速増加を考慮した落下軌跡モデルを構築し、このモデルを基づいた落下位置制御を開発した。 本研究の成果として、注湯制御システムで要求される充填重量、落下位置などの注湯パラメータ全体の高精度化を実現した。本研究では対象液体を水とした注湯実験を行ったが、今後は実用化を踏まえて溶融金属での注湯制御の有用性を検討していく。
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