本研究課題の目的は、D級増幅器を用いたエネルギー回生アクティブ振動制御に適した制御器として、アクチュエータ等の飽和とエネルギー収支に関する制約条件の下で制振性能を最大化する制御器を開発することである。この目的に沿った制御器として、前年度(平成25年度)は入力を調和入力と仮定することによって少ない計算負荷で飽和制約を考慮できるモデル予測制御器を提案し、1自由度系を対象とした数値シミュレーションにより基礎的な有効性を示した。しかし、飽和制約の扱いが調和入力の振幅の打ち切りというヒューリスティックな扱いであり、飽和制約時の制御入力の最適性に関する考察が不十分であった。この点を解決するため、平成26年度は制御性能の評価関数として振動系のエネルギーを用いた場合について、評価関数の等高線の形状から幾何学的に考察を行い、制御ホライズン長が固有周期の半周期の整数倍となる場合には、調和入力の振幅の打ち切りで得られる解が制約条件下での最適解となることを示した。 また、調和入力を仮定したモデル予測制御器では、エネルギー収支に関する制約の考慮に必要なアクチュエータの平均回生パワーの予測が容易に得られるという優れた特性があるが、実際の回生パワーよりも予測が小さくなる傾向が見られた。その原因としては、予測の際に外乱入力を考慮していないことが考えられ、平成26年度は正弦波外乱モデルを予測のためのモデルに導入し、その状態をオブザーバにより推定することで外乱入力を考慮して予測精度の改善を図った。
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