皮膚等の組織が長時間圧力を受けて壊死してしまう褥瘡(床ずれ)は、難治性で感染症を引き起こす可能性が極めて高く、患者の大きな苦痛となっている。また2時間おきの体位変換が必要で介護者の負担も大きく、高齢化社会の深刻な問題となっている。 本研究では、超音波リニアモータを複数個設置し、体圧の掛かった箇所を凹ませる方式の褥瘡軽減ベッドを提案し、褥瘡軽減ベッド用の超音波リニアモータの開発を試みた。超音波モータはギアが不要で静粛、保持力が大きい、電磁波の発生が少ない等の利点がある。 試作した超音波リニアモータは複合振動を得るため、共振周波数 60 kHz・直径 15 mmのボルト締めランジュバン型振動子(BLT) 2本をレ型コネクタで結合した構造にした。レ型に配置することによって駆動面を大きくすることができる。平成23年度に試作した超音波リニアモータは最大推力 31 N・最大上昇速度 177 mm/s が得られ、以前の研究で試作した超音波リニアモータより性能が向上した。しかし、超音波リニアモータの駆動周波数は BLT の共振周波数より低く、59.6 kHzであった。また、各振動子の共振周波数にはずれがあり、十分な性能が引き出せていないことが分かった。 平成24年度(最終年度)には実際の音速を用いて再設計した超音波リニアモータを試作した。また、それまで片方の振動子にのみスペーサを挿入していたが、共振周波数のずれを解消するため、両方の振動子にスペーサを挿入した。改良の結果、共振周波数はほぼ BLT の共振周波数に一致させることができた。負荷特性を測定した結果、最大推力 40 N・最大上昇速度 267 mm/s が得られた。振動振幅の小さい方の BLT とコネクタとの接続部の接触圧力に偏りが見られるため、接続部が全面で接触するように改良すれば、更に性能は向上すると考えている。
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