研究課題/領域番号 |
23760213
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 雄介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60373031)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バリアフリー / ロボット工学 / 移動機構 / 移動支援 / 文化財 |
研究概要 |
本研究では,古い木造建築や石畳の古道,国指定史跡内の遊歩道など,歴史的・文化的に価値を有する環境において,車いす利用者の円滑で快適な移動を,その環境の本来の形から大きく手を加えることなく実現する,「文化的環境に対する低侵襲性」を備えた移動バリアフリー技術の確立を最終目標とし,環境を改変することなく,環境に対して人間が通行する程度のダメージしか与えずに,階段や斜面を含む歴史的に本来の移動経路を自立して通行することのできる移動支援機器の開発を行うことを目的としている.本年度は,これまでに試作した階段昇降機構の基本設計を基に高静的安定性と低接地圧を実現する複数車輪式階段昇降機構の開発・試験・改良を行う計画であった.申請者がこれまでに開発した複数車輪式形状可変型階段昇降機構は昇降中も常に静的安定性を確保し,広い接地面積により人間が歩行する際と同程度の低い接地圧を実現するものである.この基本設計を基に,具体的には,安全性に配慮し搭乗時の座面高さを低く抑える機構の開発を行った.この機構は,4節リンク部の変形に応じてZMPを支持多角形の中心付近に位置させることができるよう2自由度の脚機構を備えていたが,最大の問題はこの機構が2自由度のシリアルリンク機構であり,脚を垂直に立てた場合に搭乗者シートの高さが非常に高くなり,搭乗者の安全性と恐怖感の点で問題があることであった.そこで本年度は重心位置の可動範囲を十分確保しながら座面の最大高さを低く抑える脚機構を開発した.具体的には並列駆動型平面2自由度マニピュレータの機構を応用した機構を提案した.設計においては昇降性能と自己干渉を制約条件として,座面の最大高さを目的関数としてそれぞれ定式化し,最急降下法を用いた最適化計算により設計変数を求めた.これに基づき実際の脚機構を設計し,実験によりその有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,複数車輪式階段昇降機構の開発については一定のめどが立ち,順調に進展していると考える.ただし既存の文化財でのバリアフリー対応状況の調査に関しては,調査は行っているがその整理に遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,文化財の調査を継続し,またその整理とデータベース化を行い,そこから歴史的建造物への適応が可能な移動機構の機能的要求に関する知見を得る.また転倒防止機構の検討と試作を行い,知見を得る.さらに,駆動方式に関して新機構の提案を行い,検討と試作を進め,これらを統合してゆく.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,重心制御機構の再設計箇所を当初の想定より少なくしても同等の性能が確保できることを確認し,構造部品の購入を削減したことにより発生した未使用額である。この額は平成24年度請求額と合わせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.平成24年度は,転倒防止機構,新駆動方式の関節機構の試作においては,すべて市販の消耗品を適宜組み合わせて行う.そのため機械構造部品,機械要素部品,制御用ハードウェア,コントローラ部品などの購入のために物品費を支出する.文化財の調査に関しては,主として関東地方の歴史的建造物の調査,および国宝四城と復元城郭建造物等の調査において旅費を支出する.また,研究動向調査のため国内学会1回,国際学会1回の参加のため,旅費を支出する.
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