研究課題/領域番号 |
23760219
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神永 拓 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (90571571)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電気静油圧アクチュエータ / エネルギ蓄積 / 二関節筋 |
研究概要 |
二脚ロボットは制御が難しくアクチュエータに対する要求も厳しいため,実用化に至っていない.近年,多関節筋構造や力感応アクチュエータの利用により技術の革新が起ころうとしているが,いずれも駆動系に本質的な問題を抱えている.低摩擦な電気静油圧アクチュエータ(EHA)を用いるとアクチュエータの本質的課題を解決できることが期待されるが,依然,エネルギ蓄積やそのエネルギの爆発的発揮などができないという課題があった.本研究では,二関節筋に弾性を持たせたものとバックドライバブルな単関節筋EHAを並列に結合するEHA-PEを提案し,高パワー密度を有する駆動系とバックドライバビリティ,エネルギ蓄積能力,制御性の向上の実現を目指す.また,EHA-PEを脚構造に適用することで新たな脚機構の設計論を展開し,その制御方法を確立することを目的としている.この手法が確立されれば,力制御性や耐衝撃性,大出力特性といった脚移動メカニズムに求められる要求に答えることができ,脚移動メカニズムの実用化に大きく貢献することが期待される.本研究は3ヵ年で計画しており,初年度と第2年度は機構の開発,最終年度は制御手法の確立に重点を置いて研究を進める計画である.初年度はEHA-PEの基本構造を検証する計画であった.そこで,本年度はそのためにエネルギ蓄積アキュムレータを設計し,基礎的な評価実験を行った.さらに,二関節筋・単関節筋EHAの機構設計を行うと同時に本来第2年度に計画していた二関節筋・単関節筋EHAの設計論を研究した.また,当初第2年度で計画していたトラス構造によるリンク構造を前倒しで試作し,軽量で高剛性なリンク部品を開発した.第二年度は初年度で設計したEHAのコンポーネントを試作し,EHA-PEを有する二関節筋駆動脚機構を開発する計画であり,最終年度は脚メカニズムの完成とその制御手法に関する研究を行う計画としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本来,今年度はEHA-PEの基本的な構造の模索とエネルギ蓄積アキュムレータの設計を計画していた.具体的な項目としては(1)脚アクチュエータの仕様・自由度配置の決定(2)エネルギ蓄積アキュムレータの設計(3)二関節筋EHAの設計(4)並列弾性要素の効果の確認を計画していた.本年度の実績としては(1),(2),(3)を実施した.また,(4)を現時点で実施するのに代えて本来第2年度に実施予定であった内容である,二関節筋+単関節筋アクチュエータ駆動脚機構の設計論の構築を本年度に実施したほか,トラス型リンク部品の設計を行った.具体的には,(1)に関しては標準的な成人男子の寸法を参考とし股関節から3-1-3自由度の7自由度構成とすることとした.(2)に関しては直動型のエネルギ蓄積アキュムレータを開発した.この設計においてはエネルギ蓄積量を正確に把握しつつ,オイルシールによるエネルギロスを防ぐために磁気リニアエンコーダを液浸させて使用する方法を考案し,実際にアキュムレータ内に搭載することに成功した.さらに,アキュムレータのエネルギ蓄積能力に関する基礎的な評価を行った.(3)としては従来のEHAの流路構造を見直すとともに,二関節筋と単関節筋アクチュエータを関節内に組み込んだ際にそれらの出力軸の同心度を保証できる構造を考案した.さらに,本来第2年度の研究内容としていた二関節筋+単関節筋アクチュエータ駆動脚機構の設計論を,二関節筋+単関節筋アクチュエータにより構成される関節駆動系を冗長駆動系と考え,人の動作の逆動力学解析から求めた歩行やホッピング時に必要な関節トルク・角速度特性を各アクチュエータに配分する方法を2次計画問題として定式化する方法を開発した.また,カーボンロッドを用いてトラス構造を構成することで軽量かつ高剛性なリンク部品を開発した.以上により計画以上の成果を得られたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
第2年度の研究内容としては,初年度からの継続課題として(4)並列弾性要素の効果の確認を行う.これは,既存の2個のEHAを並列に接続し,そのうち,1個に初年度に開発したエネルギ蓄積アキュムレータを接続することで並列弾性要素を構成する.また,当初からの研究項目である(1)アクチュエータ系のパッケージングを行い,小型軽量なアクチュエータ系の構成法を研究すると同時に,初年度のEHA-PEの設計に反映し,試作を行う.パッケージ化とは,センサ基板やハーネスなどを最適化し,必要な覆いも設計することで信頼性の高いアクチュエータコンポーネントを実現するのと同時に,リンク系全体として重心や体積効率の良いアクチュエータ配置を研究することとする.さらに,第2年度中に股関節も設計し基本的な脚構造を開発することを目標とする.第2年度からは制御的側面の研究も開始する.エネルギ制御的側面としては,EHA-PEにおける共振現象の利用を研究する.これは,共振モードを利用することで小さなエネルギ入力に対して大きな運動エネルギが得られることを検証することとする.その上で共振周波数やQ値などの指標により共振モードの解析を行い,運動計画への利用を検討する.以上を以って第2年度の研究計画とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
第2年度の研究内容を整理すると,(1)並列弾性要素の効果の確認(2)アクチュエータ系のパッケージング(3)EHA-PEにおける共振現象の利用の研究である.これらに加えて,(0)初年度に設計した膝および足首の二関節筋・単関節筋EHAの試作が第2年度に実施される内容である.第2年度の物品費としては(0)および(2)の試作に関わる消耗品費および,(3)を評価するためのモータ駆動電源の購入に充当する.旅費およびその他の費用は,初年度の研究成果を発表するために学会発表を国内会議,国際会議各1回行うために充当する.(0)と(3)の物品費に関しては第2年度前半に使用する.(2)に関しては(0)の結果に依存するため第2年度後半に実施する.国際会議としてはIEEE International Conference on Robotics and Automation 2012(米国,ミネアポリス)への参加とロボティクス・メカトロニクス講演会(浜松)への参加を行う.
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