研究課題/領域番号 |
23760219
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神永 拓 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (90571571)
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キーワード | 電気静油圧アクチュエータ / バックドライバビリティ / 脚機構 |
研究概要 |
二脚ロボットは制御が難しくアクチュエータに対する要求も厳しいため,実用化に至っていない.近年,多関節筋構造や力感応アクチュエータの利用により技術の革新が起ころうとしているが,いずれも駆動系に本質的な問題を抱えている.低摩擦な電気静油圧アクチュエータ(EHA)を用いるとアクチュエータの本質的課題を解決できることが期待されるが,依然,エネルギ蓄積やそのエネルギの爆発的発揮などができないという課題があった.本研究では,二関節筋に弾性を持たせたものとバックドライバブルな単関節筋EHAを並列に結合するEHA-PEを提案し,高パワー密度を有する駆動系とバックドライバビリティ,エネルギ蓄積能力,制御性の向上の実現を目指す.また,EHA-PEを脚構造に適用することで新たな脚機構の設計論を展開し,その制御方法を確立することを目的としている.この手法が確立されれば,力制御性や耐衝撃性,大出力特性といった脚移動メカニズムに求められる要求に答えることができ,脚移動メカニズムの実用化に大きく貢献することが期待される. 本研究は3ヵ年で計画しており,初年度と第2年度は機構の開発,最終年度は制御手法の確立に重点を置いて研究を進める計画である.第2年度は(1)EHAのコンポーネントの開発と(2)二関節筋駆動脚機構の開発ならびに(3)並列弾性要素の効果の確認および制御系の研究を計画していた.さらに追加の研究課題として(4)駆動系のバックドライバビリティとトルクセンシング性能がバックドライバブルな制御系に与える影響の調査を設定し,研究を遂行した. 最終年度は脚メカニズムの完成とその制御手法に関する研究を行う計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第2年度は(1)EHAのコンポーネントの開発と(2)二関節筋駆動脚機構の開発ならびに(3)並列弾性要素の効果の確認および制御系の研究を計画していた. この計画に対して本年度は(1.1)脚アクチュエータの試作(2.1)脚アクチュエータの設計および設計最適化(2.2)足首関節のパラレルリンクメカニズム設計(3.1)弾性アキュムレータを有する関節の動作評価と設計指針の再検討,を実施,さらに追加の研究課題として(4)駆動系のバックドライバビリティとトルクセンシング性能がバックドライバブルな制御系に与える影響の調査を設定し,(4.1)トルクエンコーダ搭載EHAを用いたバックドライバビリティの調査,を行った. 詳細としては(2.1)足首などの複合軸関節において受動的球面軸受けをパラレルメカニズムで駆動する方式がアクチュエータの配置,出力パワー,関節強度の観点から望ましいという設計方法に行き着いた.(2.2)上記パラレルメカニズムを実現するためには直動型アクチュエータが設計上望ましいという結論に至った.さらに(2.1)このような直動駆動球面関節に2関節筋アクチュエータを並列接続した場合のキネマティクス設計を最適化問題として定式化し,最適設計を行った.(3.1)弾性アキュムレータを有するEHAのダイナミクスが通常のEHAの運動方程式の拡張で表されることを示したほか,弾性アキュムレータを用いることでバックドライバビリティを改善できることを示したが,共振モードを実現するためにはアキュムレータのイナーシャが不足していることが判明した.この結果はEHAに弾性を持たせるためには出力段以降に弾性を配置することが望ましいことを示しているがさらなる理論的検証が必要である.(4.1)トルクセンサの効果とバックドライバビリティの寄与に関する考察が行われた. 以上により計画以上の成果を得られたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究内容は(1)脚機構の開発と評価(2)エネルギ蓄積・回生制御方法の検討(3)並列駆動EHAの制御系の開発を行う.具体的な内容としては以下のとおりである.(1)第2年度に開発したアクチュエータを備える足首機構を完成させ,評価を行う.また,そのための治具の開発を行う.(2)弾性要素を有するEHAのモデルを解析し,効率的なエネルギ蓄積を可能にする設計論を模索すると同時に,弾性要素を有するEHAの制御系を設計する.(3)アクチュエータを並列駆動するための制御系をトルク制御を基本として構築し,動作を評価する. これらの評価を行うことで,歯車駆動では実現が難しかった大出力や耐衝撃性を有しながら路面適応など力感受性が求められる脚機構の設計法を論じる.ヒューマノイドロボットをはじめとする多脚ロボットの性能を飛躍的に向上する設計論の構築を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は(1)脚機構の開発と評価(2)エネルギ蓄積・回生制御方法の検討(3)並列駆動EHAの制御系の開発を行う. そのために(1)脚機構の試作費,(2)弾性アクチュエータの設計改変費,(3)モータの協調制御を行うための駆動回路の購入費が必要になる.これらは年度前半での使用を意図している. また,研究成果を発表するために(4)国内学会2件(ロボティクス・メカトロニクス講演会(つくば,5月),日本ロボット学会学術講演会(東京,9月)),国際学会2件(IEEE International Conference on Humanoid Robots(米国,アトランタ,10月),IEEE International Conference on Intelligent Robots and Systems(東京,11月))での発表を計画している.
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