二脚ロボットを実環境で用いる上での最も大きな課題のひとつはアクチュエータの特性である.特に,力感受性,パワー密度,耐衝撃性,エネルギ蓄積能力は従来のロボットアクチュエータの構造に起因する本質的課題であり,ロボットの実用化に向けて避けて通れない.この問題は歯車減速機の力伝達原理およびバックドライバビリティの欠如に起因するところが大きく,油圧駆動系の一種である電気静油圧アクチュエータ(EHA)を用いると力感受性や耐衝撃性を飛躍的に向上できることがわかっていた.本研究の目的は高パワー密度を有する駆動系とバックドライバビリティ,エネルギ蓄積能力,制御性の向上の実現,またそのような駆動系を脚構造に適用することで新たな脚機構の設計論を展開し,その制御方法を確立することにより二脚ロボット駆動系の本質的な問題を解決することである. そこで,弾性を有するEHAを並列に配置するEHA-PEを提案し,この基本概念に則って①機構の開発②制御手法の開発③評価手法の開発を行う計画であった.①脚用EHAとして膝に適した回転型,足首に適した直動型のアクチュエータを開発,また,エネルギ蓄積装置としての弾性差動アキュムレータを開発した.さらに,二関節筋・単関節筋併用脚構造の最適設計法を提案し,二関節筋・単関節筋併用脚構造の構造設計を行った.②トルクセンサを搭載したEHAを用いてバックドライバビリティの力感受性に与える影響を調査したほか,4点圧力計測を用いた摩擦補償制御ならびに速度制御によるEHAの力制御を提案した.③負荷条件下での応答を評価する質量負荷型アクチュエータ評価装置を開発し,直動型EHAの評価を行った結果,最大推力1.5kN,位置制御帯域2.5Hzの結果を得た. これらによりEHA-PEを用いて大出力二脚ロボットを構成するための高性能アクチュエータ構成論,設計法,制御手法および評価手法を開発した.
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