研究課題/領域番号 |
23760228
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
舩戸 徹郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40512869)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 歩行・走行 / 姿勢制御 / 運動計測 / 不安定環境 |
研究概要 |
不安定な環境上での歩行の調整機構を調べるために、本年度は(1)実験装置の開発及び(2)ばね付き靴を用いた不安定環境下での歩行・走行実験(3)外乱条件下での歩行実験を行った。(1)実験装置の製作では、トレッドミルを載せた板をばねで土台と固定し、ばねの固さを変えることで、安定性を変えられる装置を製作し、歩行実験を行う環境を整えた。(2)実験製作と並行して、床ではなく、靴底にばねを付けることで異なる剛性条件を設定し、トレッドミルの速度を徐々に変えながら歩行・走行中の関節運動を計測した。トレッドミルのベルト速度によって決まる歩行・走行速度を実現するために、通常の靴条件では脚軸を振る運動の振動数と歩幅の2つを変化させるのに対し、低い身体ばね剛性を持つ靴を履いて走行を行うと、常に一定の脚軸振動数をとり、歩幅のみで目標の走行速度に対応するような運動調整を行うことが分かった。このことはヒトが固有振動数を陽に利用して環境適応を行うメカニズムの存在を示す基礎的なデータを提供しており、今後は製作した実験装置を用いることで、より詳細な運動調整メカニズムの解析を行う。(3)歩行中に外乱を加え、運動の変化を調べることで、不安定化した運動が定常歩行に戻るプロセスを調べた。その結果、外乱前と不安定歩行への復帰後の運動では、位相に偏差が見られた。これによって歩行の位相を調整することで安定化を図る運動調整メカニズムの存在を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)ばね付き床面上での運動の計測、(2)計測した運動の解析による特徴抽出、(3)力学解析を通して、不安定な環境下での歩行運動の調整メカニズムを明らかにすることである。(1)ばね付き床面上での運動計測については、実験装置の開発が完了したこと、ばね付き床面上での解析は行っていないが、代わりにばね付き靴を用いた低剛性環境下での歩行実験を完了したことで70%, (2)計測した運動の特徴抽出については、ばね付き床面上の歩行の解析は行っていないが、ばね付き靴を用いて実験解析を行い、低い身体剛性下での運動調整メカニズムの特徴を示すことができたため50%、(3)力学解析については、未完であるため、全体の研究の中で40%程度が終了した。研究期間が3年間のプロジェクトであるので、順調に研究が進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度開発した実験装置を用いて歩行実験を行い、床剛性の低下に応じた運動変化を調べる。本年度のばね付き靴を用いた身体剛性の低下による運動調整の解析において示した固有振動数に基づく運動調整のメカニズムが、床剛性の変化においても同様に見られるかを調べ、さらに床を固定しているばねを徐々に変えることによって、剛性と運動の関係を調べる。また得られた調整メカニズムを用いたシステムモデルを構築して、力学シミュレーションを行い、このような運動調整メカニズムの姿勢制御における力学的役割を解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の使用用途として、本年度開発したばね付き床上での歩行実験に関わる電子回路などの必要機器の購入、実験設備の使用料金、今年度、次年度の研究成果を国内外で発表し、検討を行うための出張費用として使用することを計画している。
|