研究課題/領域番号 |
23760228
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
舩戸 徹郎 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40512869)
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キーワード | 姿勢制御 / 歩行 / 歩行 / 運動計測 / 不安定環境 |
研究概要 |
様々な環境下で歩行できるヒトの運動制御則を解明し、環境適応性を持つ機械の設計論へ応用するため、本研究では、①不安定な床上での歩行実験②異なる安定条件下での歩行実験の解析による特徴抽出③力学解析を行うことを計画している。本年度は①ばねによって安定性を変えられる床上でのヒトの歩行実験及び②異なる安定条件下での歩行実験の解析を行った。 ①歩行実験では昨年度製作した、トレッドミルにばねを取り付けて歩行時の床の安定性を変えられる実験装置上で歩行実験を行った。様々なばね定数のばねを用いて床の固さを変化させることで、床の固さ(安定性)を様々に変えた環境下での歩行中の関節の動きを、モーションキャプチャシステムを用いて計測した。 ②計測した歩行運動から、歩行周波数・立脚期間・遊脚期間・デューティ比を導出し、床の固さ毎に比較を行ったところ、床の固さ(安定性)が下がると立脚期間が増加・遊脚時間が減少し・それに伴ってデューティ比が変化した一方、歩行周波数についてはほとんど変化しないことが分かった。さらに、足角度を立脚期の脚軸角度(腰から足先までの線を脚軸としたときの、垂直線と脚軸の角度)を導出したところ、離地時刻における脚軸角度が床の固さによらず一定であることが分かった。これらの結果から、ヒトは床の固さ(安定性)が下がると、歩行周期を変えずに立脚期の足の動きを遅くし、常に同じ脚軸角度が一定になった時に離地するという戦略をとっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、①ばね付き床面上での運動の計測、②計測した運動の解析による特徴抽出、③力学解析を通して、不安定な環境下での歩行運動の調整メカニズムを明らかにすることである。本年度は①ばね付き床面上での運動計測を主に行い、様々なばね定数を持つ床条件での歩行を計測できたことから、95%達成したと考える。②計測した運動の解析による特徴抽出については、特に歩行中のキネマティクスの特徴についてはほとんど抽出できたと考えられ、安定性の異なる環境下でヒトがどのような制御戦略を持っているかについての仮説を構築することができたため、80%達成したと考えている。③力学解析については、現在歩行の多リンクモデルの構築を行っており、定常歩行状態での力学解析について行ったが、不安定環境下における、本研究での結果を基にした解析については行っていないため、達成度は25%程度と考える。以上より、全体の研究の中で70%程度が終了した。研究期間が3年間のプロジェクトであるので、順調に研究が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で様々な歩行環境下におけるヒトの歩行運動のキネマティクスの特徴を抽出し、常に一定脚軸角度において離地し、離地期間を変えながら全体の歩行周期を一定に保つというヒトの制御戦略についての示唆を与えることができた。また、それと同時に速度変化や床の傾斜が変化する環境下での歩行実験を行い、環境変化に応じてヒトが歩行の特徴のうち、一部のみを変化させているという結果を得ている。今後はこのように歩行環境が変化する状況におけるヒトの制御戦略を、力学シミュレーションを用いた力学解析の観点から検討し、実験によって得られた制御戦略が実際に安定性に寄与することかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の使用用途として、ヒトの歩行実験に伴う赤外線反射マーカなどの必要機材の購入、実験装置のメンテナンス費用、実験設備の使用料金、今年度、次年度の研究成果を国内外で発表し、検討を行うための出張費用や論文の投稿費用として使用することを計画している。
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