本研究では,全方向移動性を有し,転倒しても走行継続が可能な不整地移動ロボットによる災害後の被災者の迅速・広範囲探査の実現を目指している.具体的には,火星などの惑星上や,地震・テロ攻撃後の瓦礫上といった不整地において,不意な転倒が発生しても,走行を継続することが可能な超対称型移動探査ロボットの開発を第一の主要な目標として,研究開発に取り組んできている.実際の物理的な構造体としての機能を確認する最も確実性の高い手法として,実際に実機を設計・試作して,実験を通して基本機能を確認するやり方で研究開発を進めてきた.具体的な機体構成として,構造自体が対称性を有する円形断面を有する駆動機構を3つ対称配置することにより,不整地移動性と対転倒性を高めることに挑戦した. 平成24年度は,着地性の向上および駆動機構の特異線を無くすことによる走破性の向上に努めた.飛行体からの投擲実験によって上空から投下しても,着地姿勢によらずに走行姿勢に戻ることが可能なように,重心を機体中心からずらして配置する構成とし,実験を通して転倒からの復帰性の向上を確認した.また,前年度から取り組んでいる超対称性ロボットの足回りである円形断面クローラにおいては,より滑らかな全方向移動性を実現するために,円形の断面構造を維持した状態で,特異線を持たず,任意方向に駆動力を生成することが可能な機構の考案・開発が必要となっていた.そこで,通常のクローラ構造を湾曲させて1ユニットとし,それを上下方向に対象配置することで,全体の断面を円形にするクローラ構造を新たに考案・設計・試作した.本実機を用いた実験により,特異線がなく,斜め方向へも移動可能という連続的で滑らかな全方向移動性を確認することができた.実環境での活動を求められる探査体の研究として,転倒しても移動継続が可能で任意方向に移動可能な構造体を構築したことは高い意義があると考える.
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