提案するひずみ可視化シートは4層から構成されており,下から順に拡散反射層,固定モアレスリット層,油膜層,可動モアレスリット層から構成されている.固定・可動モアレスリット層の基材にはポリエステルを用い,モアレスリットを構成する薄膜には銀塩ゼラチン乳剤を用いた.また,拡散反射層にはアクリル系塗料を用いた.シートの大きさは目標であった40×20㎜よりも大きく,85×25㎜となったが,目標であった10με以下のひずみに相当する変位を計測できることを確認した.具体的な変位の精度としては,製作したマイクロステージにて0.5μmづつステップ状に変位をシートに与えたとき,その変位を市販のレーザー変位計にて計測した値を真値として最小二乗誤差を計算すると誤差は0.15μmとなった.申請時前の本シートでは一つのモアレ縞を用いて画像処理をしていたが,この精度を得るために4つのモアレ縞を1つシートに配置することで,この精度を得ることに成功した.また1001倍もの大拡大率を得られるモアレ縞を製作することにも成功した.一方で,製作したマイクロステージにて十分な精度で変位を与えられたため,引張方向から圧縮方向またはその逆方向に変位を変化させたときに10μεから30με程度のヒステリシスが生じていることが分かった.その原因は基材の剛性不足であると考察している.構造物の安全モニタリングを想定した実験として4 m,200 kgのH鋼に75 tジャッキを用いた曲げ試験も行った.その結果はひずみゲージと比較して誤差が約30μεとなった.一方でその原因を考察することで,今後行うべき課題が明らかになっため,今後もこの研究を発展させていく予定である.
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