研究課題/領域番号 |
23760233
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
神田 健介 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (20446735)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 圧電薄膜 / MEMS / PZT / バイモルフ / アクチュエータ / センサ |
研究概要 |
当研究課題は,優れた圧電特性で知られるPb(Zr,Ti)O3を,金属電極を挟んで2層連続成膜することで,上下電極を含むPt/PZT/Pt/PZT/Ptの圧電バイモルフ構造を実現し,これを構造体の一部として用いることにより超低電圧駆動のアクチュエータやセンサ,アクチュエータ,エナジーハーベスタなどの要素を一つの構造で実現するハイブリッドデバイスの開発を目指す研究である. 当該年度では,PZT/PZTバイモルフ構造の基礎特性を評価するため,片持ちはりや両持ちはり,メンブレン等の評価用デバイスの試作を行った.試作に際しては,成膜やエッチングなどのプロセスごとの圧電特性や電気特性の変化,そりを測定する事による残留応力評価を行った.ドライエッチングプロセスでは,フッ素系ガスによりPZTの圧電特性が劣化することが従来から知られていたが,本研究ではSF6およびC4H8によるD-RIE(Deep Reactive Ion Etching)プロセスでは特性の劣化は起こらず,絶縁層であるSiO2のエッチングガスとして用いているCHF3ガスによるプラズマエッチング時に圧電特性の劣化が生じることが分かった.また,バイモルフ構造作製後のアニール条件を工夫することにより,上下PZT層間での残留応力差を100MPa以下とすることができ,各種デバイスへの応用が可能なプロセス条件を得た.装置メーカの設計ミスに起因するPZT成膜装置の不具合により,研究期間の8割程度の期間中,成膜が行えない事態となったため,研究遂行上大きな問題となった.そのため上述の評価結果や得られた知見については,計画よりは現状ではやや遅れているが,現在は装置が復旧しており,次年度において問題とはならないと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の基幹装置となるPZTスパッタ装置の不具合、具体的には装置メーカの設計ミスにより,以下の不具合;(1)真空チャンバ中における水冷管からのリークによる真空引きの不具合.部品の再設計製作・交換を3度を経て解決.(2)水冷装置の取り付け向きが逆となっていたため漏水が発生.部品交換により解決.これらの原因により当該年度の8割の期間中装置が動作していなかった.シミュレーションや試作済みのデバイス評価を行うことである程度の研究の進展は得られたが,当初計画よりはやや遅れている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度ではある程度のデバイス応用のための知見は得られたため,最終年度となる24年度では,当初の予定通り超低消費電力のアクチュエータやハイブリッドデバイスを提案し,試作・評価を行う.設計に際してはシミュレーションを援用することで円滑なデバイス設計を行う方針である.また,成果の対外発表についても積極的に行っていく予定である.なお,当該年度の研究費に残額が生じているが,これについては研究の進捗の遅れに起因している.最終年度となる24年度に使用予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では,デバイスの設計を行う上で必要となるシミュレーションソフトウェアのライセンス更新,電気的特性の評価装置の導入を検討している.また,測定を円滑に進めるため,学生のアルバイト雇用も検討しており,当初より謝金を計上している.
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