本研究では、イオン導電性高分子・貴金属接合体(Ionic polymer-metal composite: IPMC)と呼ばれる機能性高分子材料のセンサ機能に着目し、その応答モデルの構築とアクチュエータとセンサの両機能を統合した応用を目的に研究を実施した。 本年度は、応答特性の解析のために、電極のメッキ回数の変化によるセンサ応答の変化について解析した。また、物理モデルに基づく解析モデルを構築するため、Onsagerの方程式をベースにして応答モデルを導出し、実験結果との比較を行った。研究期間全体を通した成果の概要は以下の通りである。 (1) センサ応答特性の実験的検証: 乾燥状態と湿潤状態のセンサ応答について周波数応答解析を行い、応答特性の違いを確認した。また、高分子内のカウンタイオン種の違いによる応答変化について検証を行うとともに、電極の構造に起因する電気インピーダンス特性の影響について確認した。 (2) センサ応答のモデル化: アクチュエータのモデリングに関する先行研究を基にして、高分子内部の応力分布と、イオンと溶媒の移動・拡散の結合モデルをベースに、センサ応答モデルを導出した。高分子内の物理パラメータと電気インピーダンスをパラメータとし、乾燥と湿潤を問わず適用な可能なモデルを構築した。 (3) センサ・アクチュエータ応用の検討: 曲げとねじりの情報を同時に測定するセンサシスムを構築するための基礎的検証を行った。アクチュエータ利用についても、環境の変化による応答特性の変化について検証した。
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