研究課題/領域番号 |
23760245
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小澤 隆太 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40368006)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 2足歩行ロボット / バランス制御 |
研究概要 |
受動性に基づく制御方法により二足歩行ロボットのバランスを制御する方法とその際に必要な上体の姿勢推定法に関する研究を行った。二足歩行ロボットは足の設置部分に駆動力を持たないため、本質的に劣駆動機構となる。そのため、この劣駆動性に対する対処方法が必要となる。そこで、制御系の設計を2段階に分け、劣駆動系であっても安定にバランス制御を実現できる方法を提案した。まず、最初の段階では上体への直接的な制御入力があると仮定することで、系を完全駆動系とみなし、その制御入力を計算する。これにより、通常の受動性に基づく制御方法による知識を使い簡単に制御系を構築することができる。次に、この制御系を劣駆動系に変換する。この時、足裏と地面の接地拘束をうまく利用することで、2足歩行ロボットが劣駆動系であっても受動性を満足することができることを理論的に示した。また、この方法が多点の場合に拡張し、シミュレーションにその有効性を確認した。また、このような2足歩行ロボットのバランスが点接触するような場合において静的には安定化できず、動的に安定化した場合もエネルギ効率が悪くなることをシミュレーションにより示した。この研究成果は国際会議と国内会議にて報告済みである。次に、この制御系を実現するときに重要となる上体の姿勢安定化する方法についての研究を行った。ここでは、姿勢を推定するために加速度センサ、磁気センサにより重力ベクトルと地磁気ベクトルを推定することでロボットの姿勢を推定するが、この姿勢を推定するときに、ロボットが並進するときの加速度が重力ベクトルの推定に及ぼす影響が問題となる。そこで加速度の大きさにより、重力ベクトルの推定法を切り替える方向を提案し、その実験的検証を行った。この成果は国内会議により報告済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度の目標は、2足歩行ロボットのための片脚・両脚立ちの両方での実現と2次元平面および3次元空間でのバランス制御系の構築すること、および加速度・磁気センサによる姿勢推定法の開発することにあった。バランス制御方法に関して、空間を動ける歩行ロボットが片脚で安定化できることを理論的に示し、またその方法を多点接触の場合でも適用できるように拡張した制御系を構築した。この制御系の有効性は、ヒューマノイドロボットを用いた3次元のシミュレータにより検証できている。これは、当初の予定通りと言える。実機実験はまだ行われていないが、今後購入した実機によりバランス安定化法の有効性を検証していく予定である。また、姿勢推定に関しても同様で、カルマンフィルターにより姿勢を検出する方法および重力ベクトルの切り替え方法を提案し、これらの方法が推定した重力ベクトルに作用する加速度の影響を軽減し、推定精度を向上することを実験的に検証している。これは、ほぼ目標通りと言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、これまでシミュレーションにより検証してきたバランス制御方法を実機実験にて検証していく。現在、購入したヒューマノイドおよび制作中の平面ロボットの二つの実機により、この制御系の検証を行っていく予定である。次に、バランス制御系をより大きな外乱が作用する場合にもロバストになるように改善していく。特に、現在のバランス制御は2足歩行ロボットが外部から押されるような大きな外乱が入った場合、この外乱に対応することができない。この外乱が与えられてもロボットのバランスを保つためには脚の踏み換え等の新たな対応策を行う必要がある。そこで、この踏み換えを行うための制御方法を提案する。また、この制御方法の有効性をシミュレーションにより検証を進めていく。上記のバランス制御系の実験と踏み換えのシミュレーションがうまくいった場合、この踏み換え法の実機実験も併せて進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主要な項目は、国内および国際学会に参加するための旅費、英語論文の校正、関連文献の資料費など、本研究課題の研究成果を発表するため、または発表に必要な準備をするためのもの、および実験に必要な物品である。これまでの進捗状況からバランス制御が外界センサを用いずともうまく動作していたのに対して、踏み換えの場合は外界センサが必要な可能性がでてきた。そのため、物品費の一部は、踏み換えのタイミングを知るのに必要なセンサの購入費用にあてる。
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