本研究の目的は,3次元2足受動歩行機に扁平足とバネ足関節および球面踵部を導入し,その安定化原理を明らかにすることである.本年度は,前年度実現した直動膝関節を持つ3次元2足準受動歩行機に歩行機の歩容を計測するセンサと足裏床反力を計測する力覚センサを実装し,実験データに基づく歩行解析を行った. まず,球面踵部について,扁平足の内側両端を円弧状に切断することで遊脚の振り抜きが確実となり継続的な歩行が得られることを確認した.また,足裏床反力軌跡は支持脚側で円(両足裏でみると8の字)を描くように運動するため円弧形状の踵が有効であることが確認された. 次に,継続的な歩行(つまり安定な歩行)が確認できる膝の伸縮周波数を変化させて歩行実験を行った.その結果,特定の周波数において歩幅が最大となる(ピークを持つ)とともに継続的な歩行が実現されることを周波数応答解析的に明らかにした.歩行は周期運動であるため歩行機の振動特性に依存することが考えられるが,このように明確な周波数応答特性として実機により明らかにした例は過去の我々の2次元歩行以外に存在せず,学術的に意義のある結果であると考える. さらに,ピーク時の周波数からこれを増化させると歩行困難な領域が現れ,さらに周波数が上がると再び継続歩行が確認された.このとき,膝の波形に対して股関節角度の波形が180度反転する.これは,最初のピークを歩行の1次モードと捉えると歩行の2次モードが現れたものと考えられる.こういった現象は,マラソンにおけるストライド走法とピッチ走法に見られるような異なるモードのロコモーションが同じ歩行機によって実現されたという意味で興味深く,意義のある結果と考える.
|