研究課題/領域番号 |
23760252
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
岡本 吉史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40415112)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 位相最適化 / 有限要素法 / モータ |
研究概要 |
圧粉磁芯モータの位相最適化計算を行うために,2011年度は,(1)位相最適化手法の開発,(2)並列化計算環境の構築と位相最適化計算の実装を行った.具体的な研究実績を下記する.(1) 位相最適化計算は,大規模な整数計画問題となる.それゆえ,各有限要素に材料密度を定義して,降下法による求解手法が採用されることが多いが,この方法は,制約条件が多くなると各パラメータの設定が難しく,また,目的が変わるたびに,随伴変数法に基づく感度解析の定式化とコードの修正が必要となるため,汎用性に欠ける.それゆえ,収束までに時間がかかるものの,汎用性に富む遺伝的アルゴリズム(GA)を導入した.さらに,収束特性の向上と実用的な解を得るために,多段的に設計領域の解像度を向上させる多段式 GA を新たに開発した.その結果,従来の GA よりも数倍程度高速に,かつ,実用的な解を得られることを明らかにした.また,IPMモータ内部のフラックスバリアの位相最適化に適用し,良好な特性を有する最適化計算が実行できた.(2) 当初,高速化のために,GPU を援用した方策を検討していたが,費用対効果の観点と,提案した多段式 GA の並列性能を鑑みて,PC クラスターを構築した.構築した PC クラスターは,16台のPCで構成されており,各CPUはIntel core i7 2600Kを搭載している.48並列を行った結果,一台のPCで計算を行う場合に比べて,35倍以上の高速化を達成できた.多段式GAの効果も含めると,単純GAで一台のPCで計算するよりも,約100倍程度の高速化が達成されている.しかし,現時点での計算は,二次元領域における位相最適化計算であるため,圧粉磁芯の優位性が発揮される三次元位相最適化には,さらなる高速化が必要となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧粉磁芯で構成された電気モータの三次元位相最適化計算を行うためには,さらなる計算時間の低減が必要となる.2011年度内に当該項目をクリアする予定であったが,実的な位相最適化計算を行うには,さらなる高速化の必要性がある.なお,2011年度の主たる目的であった,多段式GAの開発は成功しているため,区分を「おおむね順調に進展している.」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として,(1)有限要素法に基づく磁界解析ソフトウェアの高速化,(2)圧粉磁芯の磁気特性・鉄損特性データの収集,(3)位相最適化計算による高効率化シミュレーション,を策定している.各項目の詳細を下記する.(1)位相最適化計算の過程では,多種多様なトポロジーが創生されるため,回転機の位相最適化計算を実用的な計算時間内に終了させるためには,有限要素解析の高速化が欠かせない.それゆえ,有限要素法の根幹となる連立一次方程式の求解部分に,残差ノルムの単調減少が数学的に保障されているMRTR法を導入することで,さらなる加速効果を検証する.また,前処理部には,対称ガウスザイデルを使用し,Eisenstatの方法の併用によって,高速化を実施する.また,高速化の効果が不足するようであれば,MRTR法を並列実装し,PCクラスターの台数をさらに増加させる必要がある.(2)上記の高速化に関する研究を完了次第,圧粉磁芯の磁気特性・鉄損特性を測定する.(3)効率を評価するには,高精度な鉄損推定法が必要となるため,まずは,初期磁化曲線のみを使用した既存の推定法に基づいた方法を採用する.また,計算精度が不十分であれば,ヒステリシスを考慮した推定法の開発に着手し,高効率計算を実施する次第である.
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度にPCクラスターを構築し,研究環境はある程度整った.今後,さらなる高速化のために必要なPCを購入する可能性がある.また,それに付随するPC周辺機器等を購入予定である. また,回転機関連の文献等を購入する必要があり,それ以外の助成金は,研究打合せ,発表,論文投稿費用に使用させて頂く予定である.
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