研究課題/領域番号 |
23760253
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関屋 大雄 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (20334203)
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キーワード | 電力増幅器 / 低コスト / 共振型コンバータ / 無線電力伝送 / RF電源回路 / 非線形回路解析 / 国際情報交流 米国オハイオ州 / 国際情報交流 スペインバルセロナ |
研究概要 |
電力増幅器では、スイッチ素子における電力損失がエネルギ損失の主要因となる。そのため、スイッチに生じる電力損失の低減が、電力増幅器の電力変換効率の向上に直結する。本研究では、電力変換効率の向上とコストの削減を両立する次世代電力増幅器の研究開発を行う。現在の電力増幅器はスイッチ素子における電圧・電流のジャンプに起因する電力損失が発生する。また、その影響を抑えるために、高速なスイッチ素子を用いる必要がありコストの増大につながっていた。本研究では、スイッチ素子における電圧・電流がともに連続波形となるスイッチング技術を確立する。そのための基礎理論を申請者の持つ設計技術と非線形解析理論を融合させることにより構築する。さらに、構築した理論に基づき、無線通信用増幅器、RF電源回路、ランプバラストへのアプリケーションを意識した電力増幅器の設計を行う。これらの設計を通じ、電流・電圧波形を連続にすることに加え、アプリケーションに応じた性能改善のための役割を注入電流に付加できることを示す。提案する増幅器は性能、コストの両面において従来の技術を凌駕するのみでなく、各アプリケーションにおいてブレークスルーを創出する可能性を持つ。 本年度はスイッチ素子における電圧・電流がともに連続波形となるスイッチング技術を確立するために、その解析手法を確立した。解析の中で、出力波形に高調波成分を考慮しなければならないことを明らかにし、フーリエ解析とフィルタ理論を駆使することで、スイッチング技術の解析表現法を新たに確立することができた。さらに、このスイッチング技術を共振型コンバータに適用することを提案し、その設計、実験による動作確認を行った。その結果、高周波数で高効率動作を達成することを確認し、高効率動作と低コスト化の両立がはかれることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はスイッチ素子の電圧・電流が連続となる次世代電力増幅器について、理論的な側面からその特性を明らかにし、様々なアプリケーション開発に本増幅器を適用していくことが主要課題であった。 まず、スイッチ素子の電圧・電流が連続となる増幅器の解析手法を確立し、その解析式から増幅器を設計することに成功した。これまでの増幅器設計は基本周波数成分だけに着目していれば設計できたが、本回路に関しては基本周波数成分だけ考慮していても設計ができず、高調波成分を考慮して設計しなければならないことを明らかにした。その上で、フーリエ級数を用いて回路動作を数式化し、その上であらたに等価電圧源を定義する解析技術を提案、導入することでスイッチング技術の解析表現に成功した。解析表現を用いることにより新たな設計方法が確立され、その妥当性を回路実験により示した。本成果は次世代電力増幅器の解析にはじめて成功したものであり、開発のボトルネックであった解析表現の確立が解決されたため、今後本技術の開発速度が大きく加速されることが期待される。 さらに、スイッチ素子の電圧・電流が連続となる技術を共振型コンバータに適用することを提案し、その設計方法および実験による評価を行った。共振型コンバータを開発するにあたり、前年度開発した数値設計手法を応用し、5つのスイッチング条件、所望の出力電力の達成という6つの条件を同時に満足する最適化設計を達成した。試作実験による評価では、従来のコンバータと比較して高効率化が確認され、高効率化・低コスト化の両立の可能性が実験的に示された。 その上で、無線電力伝送システムの開発を進めている。無線電力伝送システムをパワーエレクトロニクスの立場から設計することで、高電力伝送効率を達成する無線電力伝送システムを設計することを目指している。本研究は平成25年度で継続して進める研究課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は提案する電力増幅器のアプリケーションとして、無線電力伝送、RF電源用高出力電力増幅器の開発を進める。本フェーズはこれまでに構築した、数値設計技術および解析設計技術2通りの設計手法の妥当性を確認するとともに、それぞれの長所、短所を明らかにする側面も持つ。これら二つの設計手法はアプリケーション場面場面によって使い分けるべきであると考えており、逆にいえば、二つの設計手法を使いこなせることになれば、本技術開発において、他研究機関に対し大きなアドバンテージを持つことができる。 無線電力伝送は、磁界結合を用いた伝送方式について設計し、さらに電界結合も検討する予定である。高周波数高効率増幅器は無線電力伝送の送信段としての相性が非常にいいと考えており、そのアドバンテージを実験的に確認することが最大の目的である。具体的には1 MHz、50 Wで動作し、伝送距離は数cm-数十cmの設計仕様のもとで、無線電力伝送システムの開発を行う。 一方、RF電源用高出力電力増幅器はPush-pull構造を導入しその高出力化を図る。さらに、複数周波数をもつ増幅器の結合形態やその解析を行うことによって、RF電源用高出力電力増幅器への可能性を実験的に示す。また、Push-pull構造は高調波成分削減する効果を持っており、その特性評価も行う。具体的には1 MHz、 25 Wで効率90 %以上を達成する増幅器の開発を行う。 以上、提案するスイッチング技術の設計/解析手法を確立し、アプリケーション展開への可能性を例示した上で、本研究をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、具体的な回路開発が主な研究課題となるため、主に、回路素子などの実験消耗品に使用する計画である。前2年間を通じて、実験設備は十分に用意されており、特に実験設備を購入する予定はない。回路開発期間の短縮を目的として、回路実験補助に関する謝金を積極的に導入する。 さらに、前2年間の研究成果公表のための旅費、論文誌投稿料などにも適宜使用する。旅費に関しては、現在、国際会議に1回出席、国内の研究会等に2回出席する予定である。
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