研究課題/領域番号 |
23760255
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
萩原 誠 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (20436710)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | モータドライブ / マルチレベル / 省エネ |
研究概要 |
当研究では、変圧器を用いずに変換器の高圧化・大容量化が可能なモジュラー・マルチレベル変換器を用いたモータドライブに関する検討を行った。モジュラー・マルチレベル変換器は、変換器各アームを単位変換器セルのカスケード接続により構成する点に特長がある。各単位セルは、2組の半導体スイッチと直流コンデンサから構成し、双方向チョッパの一部を構成する。平成23年度は、1) 電源側で発生する共振現象の解明、2) 低周波数運転時の検討の2点を行った。 1) 電源側で発生する共振現象の解明 一般的な2レベル変換器は、変換器直流リンク部に大容量電解コンデンサが必要である。一方、モジュラー・マルチレベル変換器は各セルに直流コンデンサを有するため、原理的に直流リンクコンデンサが不要である。しかし、コンデンサを用いない場合、直流リンク部にスイッチングリプル電圧が発生するという問題点がある。スイッチングリプル電圧は、電磁ノイズを引き起こす、素子の電圧定格に影響するなどの悪影響があるが、発生メカニズムや抑制法は明らかにされていなかった。本研究では、スイッチングリプル電圧の発生メカニズムを解明し、小容量のフィルムコンデンサを用いることでリプル電圧を適切に抑制できることを明らかにした。 2) 低周波数運転時の検討 モジュラー・マルチレベル変換器を用いたモータドライブは、各セルの直流コンデンサに固定子電流周波数を主成分とする交流電圧変動が生じる。この電圧変動は、低速域ではより顕著となり、安定な始動が実現できないという問題点があった。本研究では、コモンモード電圧と零相電流を適切に制御することにより、モータ回転数4.3 rpmの極低速運転を実現することに成功した。また、無負荷時および40%の始動トルク時において零速からの安定した始動を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モジュラー・マルチレベル変換器を用いたモータドライブの1番の問題点(課題点)は低速運転時における安定動作、および零速からの始動実現である。これらに関しては、日本を含めた世界中の技術者・研究者が検討を行っているが、現在まで成功したグループは存在しなかった。本研究では、研究室で設計・製作した400 V、15 kWミニモデルを用いた実験的検証を行うことにより、低速運転時の安定動作、および零速からの始動に世界で初めて成功した。低周波数時の安定動作実現は、当初の計画では平成24年度中に実現する予定であったが、1年早く実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究において、極低周波数時の安定動作、および零速からの始動を実現した。平成24年度は1) センサレスベクトル制御の適用、2) 同期電動機を用いた場合の検証を行うことを主目的とする。 1) センサレスベクトル制御の適用 平成23年度は、回転数センサを必要とする「ベクトル制御」を適用し、モータ回転数を制御した。回転数センサを用いることで安定運転が実現できる一方、回転数センサの使用はシステムの高コスト化・大型化を招く恐れがある。そこで、本研究では回転数センサを用いずに回転数制御が可能な「センサレスベクトル制御」を適用する。センサレスベクトル制御の場合、始動特性が悪化する可能性が高いため、センサレスベクトル制御適用時に適したモータ始動法を提案する。提案した始動法の有用性は400 V、15 kWミニモデルを用いた実験的検証により確認する。 2) 同期電動機を用いた場合の検証 高圧モータドライブの場合、誘導電動機がモータとして使用される場合が多い。上記の状況を鑑みて、平成23年度は誘導電動機をモータとして使用した場合の検討を行ってきた。一方、高圧モータドライブにおいては同期電動機が使用される場合もある。同期電動機は誘導電動機と異なり1) 直流制動が必要 2) 位置センサが必要など、誘導電動機と異なる特性を有する。平成24年度は、モジュラー・マルチレベル変換器を用いたモータドライブが、同期電動機を使用した場合においても安定に動作することを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の実験システムは、20以上の直流コンデンサを有する。そのため、実験する際は多数の電圧・電流を同時に測定する必要がある。そこで平成24年度は、電圧測定用差動プローブや電流プローブの購入費に計上する。また、平成24年度産業応用部門大会と、国際学会IEEE ECCEに研究代表者と研究協力者がそれぞれ参加するために50万円の旅費を計上する。また, 電気学会IEEE論文誌への投稿料として30万円計上する。
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