研究概要 |
本課題では、次世代型電力変換器であるモジュラー・マルチレベル変換器(MMC: Modular Multilevel Converter)を用いたモータドライブに関して検討を行った。具体的には、(1)直流リンク部の簡略化、(2)低速時の安定動作の実現、(3)安定した始動の実現を目的とし、「PSCAD Professional」を用いたコンピュータシミュレーションと400 V, 15 kWミニモデルを用いた実験により検証した。 直流リンク部の簡略化に関しては、従来型の大容量電解コンデンサを直流リンク部に接続することなく変換器の安定動作が実現できることを明らかにした。また、小容量フィルムコンデンサと低損失抵抗を直列接続した直流フィルタを使用することで、直流リンク部のスイッチングリプル電圧を抑制できることを明らかにした。更に、直流フィルタの最適設計法を提案した。また、直流フィルタの損失が変換器容量と比較し、0.03%と十分に小さいことを明らかにした。 低速時の安定動作実現に関しては、方形波状のコモンモード電圧と循環電流を利用する「方形波方式」を提案した。これは、従来法である正弦波状のコモンモード電圧と循環電流を利用する「正弦波方式」と比較し、循環電流のピーク値を50%低減できる点に特長がある。上記制御法を適用することで、低速時の直流コンデンサ電圧変動を低減できると同時に、モータの安定運転を実現できることを明らかにした。 始動に関しては、ベクトル制御や固定子電流振幅を調整する手法を適用することで,零速からの安定した始動を実現した。固定子電流振幅を調整する手法は、モータの回転数制御に速度センサが不要となるため、コストの大幅な低減が期待できる。 本研究成果は, 21世紀型省エネ社会の実現に多大なる貢献をするものである。
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