研究概要 |
平成23年度では,電源電圧利用率が高く,かつPWM高調波の少ない出力電圧を供給できる直接電力変換器の開発として,入力電流および出力電圧の正弦波化を実現する制御法を開発した。(1) 入出力波形制御法の制御アルゴリズム開発 提案システムは負荷の要求に応じて回路が降圧もしくは昇圧に切り替えられる。降圧動作の波形改善はすでに研究が行われており,本研究では,昇圧動作時の波形制御法を開発した。提案した制御法は, 従来の電流型インバータにて行う出力電流制御を, 電圧型PWM 整流器の入力電流制御に応用することで波形改善ならびに制御の安定性を改善した。提案した制御法の有効性はシミュレーションで確認した。シミュレーション結果から, 提案回路は, 一定の任意出力電圧に対して, 安定して制御可能な点が確認できた。また, 提案回路の出力電圧を連続して可変した場合についても, 安定して追従制御出来ていることが確認できた。加えて,入力電圧に対する出力電圧の下限値についても理論的に明らかにした。以上の結果から, 提案回路の昇圧動作としての波形改善法の有用性を確認し, 提案回路である昇降圧切替回路への適用可能性を明らかにできた。一方で,波形制御に関する課題も見いだせた。入力よりも低い周波数を出力する場合において, 出力電圧/電流波形に歪みが発生しているため, この点については今後改善していく余地がある。(2) 実験装置の開発 提案する制御アルゴリズムの検証は,シミュレーションおよび実験により行う。シミュレーションは回路シミュレータPsimで行った。実験装置の主電力変換回路は研究室で試作した。負荷はRL直列負荷とした。制御プログラムはRXマイコン, CPLDを用いて開発している。現在,提案する制御法の実機検証に向けて開発中である。また,モータ駆動装置も開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の目標は,昇圧動作時の入力電流および出力電圧の正弦波化を実現する制御法の開発と,シミュレーションと実験による有効性の確認としている。入出力波形制御法の制御アルゴリズム開発は,平成23年度内に制御法を提案でき目標を達成できたといえる。提案した制御法の有効性はシミュレーションで確認でき,提案回路は, 一定の任意出力電圧に対して, 安定して制御可能な点が確認できた。また, 提案回路の出力電圧を連続して可変した場合についても, 安定して追従制御出来ていることが確認できた。加えて,入力電圧に対する出力電圧の下限値についても理論的に明らかにした。しかしながら,提案法の有効性を実験で明らかにできていない。この原因として,上記,制御アルゴリズムの提案において安定性に関する課題が多く,制御法の確立に時間を要したためである。
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