研究課題/領域番号 |
23760257
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
稲田 亮史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345954)
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キーワード | 銀シース / 高温超電導線材 / 交流損失 / 高抵抗バリア / 多芯構造 |
研究概要 |
本研究では,送電ケーブルや回転機,変圧器等の交流超電導機器の低損失化に資する銀シース高温超電導線材の損失低減技術の確立に向けて,超電導芯間に高抵抗バリア層を導入した低損失銀シース線材の実現を目的としている。研究計画2年目である平成24年度は,低損失線材の基本構造である超電導芯を撚り線構造化した銀シース線材(ツイスト線材)に対してSrZrO3(SZO)およびCa2CuO3(CCO)をバリア材として導入し,高臨界電流密度を実現するための作製プロセスの検討に注力した。 前者のSZOは加工性に乏しいため,バリア材の導入厚を厚くし過ぎるとツイスト加工時に線材の破損が生じ,完成線材において10mm以下にツイスト長を実現することが不可能であった。ツイスト加工時の超電導芯への過度な変形を抑制するために,線材自体の細線化およびツイスト加工時の中間熱処理の導入を試みた。その結果,ツイスト加工時の断線を抑制することに成功し,完成線材(線幅2.7mm程度)においてツイスト長4~9mmと厳しい撚りを施した場合でも,Jc=16~24kA/cm2(77K,自己磁界下)の良好な通電特性を得ることができた。後者のCCOをバリア材とした場合,超電導体の形成に要する高温焼成後にCCO粒の凝集によるバリア層の連続性低下の問題があるため,バリア導入厚をSZOの2~3倍程度とし,SZOバリア線材と同様,線材自体の細線化とツイスト加工時の中間熱処理の導入を試みた。しかしながら,完成線材(線幅2.7mm程度,ツイスト長4~7mm程度)のJcは8~9kA/cm2程度と,SZOバリア線材の6割程度の特性しか得られなかった。 一方,ツイスト加工の度合い(ツイスト長の変化)が芯間横断抵抗におよぼす影響は少なく,全てのツイスト-バリア複合線材において,非バリア線材と比較して一桁程度の高横断抵抗化が実現できていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,年度中にツイスト構造化した線材に高抵抗バリア層を導入した銀シース線材に関して,交流損失特性(特に線材幅広面に対して垂直な交流横磁界下)を系統的に測定し,電磁気学的考察に基づいてバリア層の導入効果を考察すると共に,線材構造に関する改善事項を抽出する計画であった。しかしながら,ツイスト構造と複合化した際のバリア線材の臨界電流密度の低下を抑制に向けた線材作製プロセスの検討に当初の予定よりも多くの時間を要してしまい,年度中の交流特性の測定・評価に十分な時間を割くことができなかった。 以上より,研究の進捗は当初計画より若干遅れている状況にあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,まず前年度実施に至らなかったツイスト構造を有するバリア線材の,交流損失特性の測定・評価に注力する。銀シース線材は断面アスペクト比が10~20程度のテープ形状を有するため,線材に対する交流外部磁界の印加方向に伴い交流損失特性も異方的な振る舞いを示す。特に,最も損失低減が困難とされている,商用周波数域・線材幅広面に垂直な横磁界下での損失低減効果の検証と,電磁気学的高に基づいた損失低減メカニズムの解明を進める。 考察結果に基づいて,低損失化と高臨界電流密度化の双方を実現し得るバリア線材の構造設計~開発に至る各段階での指針を明確化する。合わせて,メートル級低損失バリア線材の試作と均質性評価に取り組み,将来的に必要となるバリア線材の長尺化への適用可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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