研究概要 |
本研究では,送電ケーブルや回転機,変圧器等への応用が期待されている銀シース高温超電導線材の交流損失低減技術の確立に向けて,超電導芯間に高抵抗バリア層を導入した低損失線材の実現を目的としている。最終年度である平成25年度は,前年度の研究で作製したSrZrO3(SZO)およびCa2CuO3(CCO)バリアを導入した19芯ツイスト線材に対して,最も損失低減が困難な運転電磁条件となる線材幅広面に垂直な交流横磁界下での損失特性を測定し,損失の発生機構および低減効果を考察した。更に,低損失線材の長尺化に向けた初期検討として,1m長のSZOバリア線材の試作を試みた。 線幅を3mm以下,ツイスト長を5mm以下に狭小化することで,芯間電磁結合の影響が表れる結合周波数fc(横断抵抗率/ツイスト長の逆数の2乗に比例)として,SZOバリア線材(臨界電流密度Jc=17kA/cm2@77K,自己磁界下)で270Hz, CCOバリア線材(Jc=9kA/cm2@77K,自己磁界下)で180Hz程度を得た。市販線材とほぼ同一形状の線幅4mmの非バリア・非ツイスト線材と比較して,商用周波数域での損失は,SZOバリア線材で1/4程度,CCOバリア線材で1/3-1/2程度に低減されていた。前者において,商用周波数域での主な損失要因は,電磁結合が分断された超電導芯内で発生するヒステリシス損失であることを確認し,現状のSZOバリア線材と同等以上のfc・Jcを達成した上で,芯数増加により超電導芯の幅を低減することで,更なる損失低減が実現できる見通しを得た。 試作したSZOバリアを導入した1m長銀シース線材について,直流四端子法および磁気顕微法により長手方向の通電特性の均質性を評価した。ツイスト長の狭小化と共に,臨界電流Icが局所的に低下する部位が増える傾向が見られ,特性低下部位では,線材厚の変動や外層の超電導芯の部分的な断線が確認された。今後の長尺SZOバリア線材の均質性向上に向けて,特に圧延加工条件の適正化に注力する必要がある。
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