研究課題
金属陰極を用いた時に安定放電をさせるため,シミュレーションおよび計算を行い,フィルタードアーク蒸着装置に接続する新規アークソースの設計を以下の点に着目し新規設計行った。1.放電の安定化:陰極付近の磁界分布は金属陰極の種類毎に異なるため,安定放電できる磁界条件の解析およびそのための装置設計を行った。(連続放電時間5分を目標)2.陰極部の改良:金属陰極の時は,アーク電流が100 A(炭素時:30 A)と大電流のため冷却が不十分であった。陰極部分の冷却効果を高めるような設計をした。3.トリガユニットの改良:アーク放電着火時以外は,ダクト内に格納するように設計を行った。 現存のフィルタードアーク蒸着装置における放電の安定化と発熱の抑制を行うために,陰極部付近および陽極ダクトの再設計を実施した。陰極部に関しては,金属陰極の種類によって最適な磁界が異なることから,磁界を自由に制御できるように,陰極裏に磁石等の磁界を発生させることのできる物を配置できるようにした。陰極の温度が上昇しすぎてアーク放電が消弧する問題に対しては,アーク放電が長く続くように,陰極裏に熱伝導の良いバックプレートを用いて冷却効果を高め,陰極の温度上昇を防ぐこととした。トリガ構造をストレート型のストライカ方式から回転型のストライカ方式に変えることで,陰極から発生したアーク放電がトリガへ長い時間直接当たることを回避するような構造とした。
2: おおむね順調に進展している
1年目に発熱および放電連続性を有する陰極および陽極ダクトの設計が終了し,1年目では組み立てに必要な消耗品の発注を既に終了しており,2年目入って,陽極ダクトをすぐに発注できるように設計および手配を終了している。予定通り2年目に放電実験に入れる目途が立った。
新規陽極ダクトを作成後,AlCrの陰極を用いて放電実験から輸送プラズマの最適化を行い,できればAlCrN膜までの形成を実施する。1.AlCr陰極を用いた時の放電制御 新規作製アークソースを用いて,AlCr陰極を用いて放電を行い,陰極点の軌道と速度を観測し,安定放電可能であることを確認する。次に,FAD装置は図2に示す各所に配置したコイルの磁界とダクトに印加する電圧でプラズマをチャンバへ輸送しているため,AlCr陰極を用いた時に効率良く輸送するための磁界およびダクト電圧を探索する。2.AlCr,AlCrN膜の形成 AlCr膜およびチャンバ内に窒素を流しAlCrN膜を形成し,以下の項目を実施する。膜形成は基板温度・基板バイアス,ガス流量(AlCrN膜時)をパラメータとして成膜を行う。膜分析(加熱前後で分析)として,組成(SEM-EDS),結晶性(XRD),密度(XRR),硬さ・弾性率(ナノインデンテーション),摩擦性(トライボメータ),耐熱性(加熱装置)を行う。耐熱性は,集光照射式加熱装置を用いて空気中で行う
アーク放電用陽極ダクトの作製および足りない消耗品に用いる。
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プラズマ応用科学
巻: 19-2 ページ: 107-112