研究課題/領域番号 |
23760259
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
美舩 健 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20362460)
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キーワード | 計算電磁気学 / 有限要素法 / マルチグリッド法 / 高速線形反復解法 |
研究概要 |
平成24年度は主に、本課題の主要研究テーマである(1)辺要素に基づく有限要素法のための代数マルチグリッド法の開発に加え、(2)疑似導体を含むT-Ω有限要素解析の反復収束改善手法の提案とその折畳み前処理への応用に関する検討を行った。 (1)23年度に開発した、静磁界解析、準定常解析、および高周波解析のための電磁界ベクトルの3成分およびスカラポテンシャル1成分を分離して扱う前処理手法について、その理論的基盤について検討を進めた。また、本前処理手法で現れる行列が代数マルチグリッド法の応用に適した性質を持つことを明らかにし、実用規模の数値解析によって代数マルチグリッド法を使用した効率的な求解が可能になることを確認した。 (2)T-Ω法による穴あき導体を含む渦電流解析について,導電率を非常に低く設定した疑似導体を導入することによって引き起こされる,係数行列の悪条件化と反復収束性の悪化の解消について検討を行った.導体部分に流れる環状電流成分を表現する補助行列を用いる陰的誤差修正法を提案し,簡易モデルを用いた数値計算によって,係数行列の条件及び反復解法の収束性が改善される可能性を示した.条件改善効果の検討の容易さから,今年度は陰的誤差修正法について検討を行ったが,陰的誤差修正法で現れる特異な方程式の求解については一般に,折畳み前処理を導入することで計算効率を改善することができる.本年度開発した手法についても折畳み前処理を適用することは可能であり,特に補助行列の列数を増加させた場合にはその効果が大きくなることが予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の主要なテーマである、辺要素に基づく有限要素法のための代数マルチグリッド法の提案および開発は、静磁界計算・準定常磁界計算・高周波計算に関して予定通りに遂行されている。さらに折畳み前処理の新しい応用例として,疑似導体を含むT-Ω有限要素解析に着目し,反復収束改善のための新手法の提案・開発に着手し、テストモデルに置いてその有効性を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに開発を行った、高性能電磁界解析のための線形反復および前処理手法について、さらに理論的および数値実験的検討を進める。また、有限要素電磁界解析における非整合メッシュを効率的に扱う手法の開発に着手し、当手法を用いた時の線形反復収束性への影響についての検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費があるのは、主に、使用する有限要素メッシュ生成ソフトと高性能計算機の更新,本年度予定していた国際会議発表のいくつかを、次年度にシフトしたためである。次年度、これらの更新・発表を遂行する。
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