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2011 年度 実施状況報告書

ガス遮断器への新材料適用におけるアーク特性の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23760262
研究機関九州大学

研究代表者

富田 健太郎  九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (70452729)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードアーク放電プラズマ / レーザートムソン散乱法 / 電子密度 / 電子温度 / 金属蒸気
研究概要

本研究では、電力用SF6ガス遮断器の環境負荷低減と国際競争力強化を目的として、遮断ガスおよび消弧室を構成する部材に新しい材料を適用して性能向上を図る場合に、その遮断性能を決定するアークの基礎特性(電子密度・電子温度)を、レーザートムソン散乱法を用いた測定等で明らかにする事を目標としている。 研究初年度である平成23年度は、そのためのアーク放電発生装置の作製おおびトムソン散乱を検出するための分光器の作製を行った。アーク放電の発生は、直径1mmで、先端が球状になったタングステン電極を使用して行った。電極を対向して配置し、電極間隔0.8mmの所に、約8kV、800Aで、減衰時定数25マイクロ秒のアーク放電を発生させた。今後遮断器内アーク放電を模擬したいので、真空容器内に電極を配置した。まずははじめに大気中でアーク放電を発生させ、二酸化炭素や窒素、酸素雰囲気中でも、放電が生成できることを確かめた。 トムソン散乱計測システムについては、トムソン散乱信号強度が非常に弱いことを考慮し、信号検出の障害となる計測レーザーの乱反射光(迷光)を十分に低減できる差分散型の3回折格子分光器(トリプル分光器)の作製を行った。トリプル分光器の透過率は10%程度で、波長分解能は1nmほどである。これにより、電極表面で発生する迷光を十分に低減した。 トムソン散乱計測のためには、計測レーザーのパルス幅(約10ns)より十分に高い精度で検出器(ICCDカメラ)のゲートとレーザーを同期させないとならない。実験当初は放電発生に伴うノイズでこれらの同期がうまくいかなかったが、ノイズカットトランスの使用でノイズ低減を行い、安定した同期精度を確保した。これらの工夫により、大気中アーク放電にトムソン散乱を適用できることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、遮断器内アーク放電プラズマを模擬した放電を発生させ、それに対してトムソン散乱法を適用し、プラズマの基本パラメータである電子密度・電子温度の計測を行う。最終的には、どのような材料が遮断性能によい影響を及ぼすかを、プラズマの基礎パラメータの計測を通して検討する。本年度はそのためのシステムの土台を作ることが大きなテーマであった。このテーマに対して、実際いアーク放電プラズマを安定的に発生できる電源を準備し、アーク放電を発生させ、トムソン散乱計測を実施し、初期的な散乱光取得を達成した。したがって、本年度に達成すべき目標を、大方達成したといえる。 比較的高電圧・大電流の実験であるため、放電発生に伴う電磁ノイズが、予想以上に大きかった。このことがナノ秒の同期精度を必要とするトムソン散乱計測にとっては大きな障害となり、その対策に思った以上の時間を費やしてしまった。また、現在のところ放電時定数の2倍程度(放電発生から50マイクロ秒)までの計測しかできていない。本研究の主旨からすると、電流ゼロ点付近での電子密度・電子温度の計測が重要となるため、今の結果は少々物足りないものである。これは、得られたトムソン散乱光に対して、放電の自発光強度が思った以上に大きかったため、十分なSN比での散乱計測が、遅い時間では困難であったためである。この対策として、計測レーザーのエネルギーの増加や、ゲート幅をより狭くするなどがある。現在最良の方法を検討中である。

今後の研究の推進方策

平成23年度は、放電と計測レーザー、および検出器であるICCDカメラのゲートタイミングの同期精度に問題があり、その対策にかなりの時間を要した。最終的に、23年度中にトムソン散乱計測を実施できたが、開始時期が遅かったために、計測に関わる消耗品(例えばフラッシュランプ)の購入をする必要がなかった。そのため、それに必要な経費を、24年度に合わせて申請した。 これまでに、対向電極間で発生するアーク放電プラズマのトムソン散乱計測システムを確立することができた。この結果を踏まえて、遮断器内で実際に発生するアーク放電のトムソン散乱計測を実施する。遮断器内では、電極材料として使用されている銅が溶融し、放電プラズマ内に混入する。また、SF6を吹き付けるノズル部分には、高分子材料(PTFE)が使用されており、これらの混入が、放電遮断に大きな影響を与えていると考えられている。銅蒸気の混入は、放射損失を増大させ、結果としてプラズマの減衰をはやめることが予想される。また、PTFEの混入により負イオンが生成され、さらにプラズマの減衰が早まることが予想される。過去に行われた、銅蒸気やPTFE蒸気が混入したプラズマの減衰過程のシミュレーションを参考にしつつ、その計算結果とトムソン散乱により実測結果の相違について、検討を行っていく。また、トムソン散乱信号強度の増加を目的とし、プラズマを乱さない範囲でレーザーエネルギーを増加させたり、プラズマ自発光の影響を低減させるための方策をとっていく。さらに、測定するアーク放電の電圧・電流の増大も行う。

次年度の研究費の使用計画

23年度の研究で、トムソン散乱計測に必要な光学部品はほぼ購入を終え、トムソン散乱計測が可能な状態に仕上げた。ただし、電磁ノイズ対策や各種計測装置の同期確保に予想以上に時間がかかり、トムソン散乱計測を実施する時期が遅れたために、この計測で必要なヤグレーザーの消耗品(フラッシュランプ、循環水フィルターなど)や、レーザー光路上の消耗品(誘電体多層膜ミラー、レーザー集光用レンズなど)の追加購入が、23年度中には必要なくなった。また、合わせてアーク放電発生用電極の追加も必要でなくなった。これらのため、23年度の請求額から534,759円が繰越額として生じた。この繰越額は24年度中に、上記に挙げたトムソン散乱計測で生じる消耗品の購入にあてる。24年度の研究費の使用計画として、まず計測レーザーに使われる消耗品(主にフラッシュランプ)の購入がある。特に、23年度では電磁ノイズ対策でトムソン散乱計測の実行が多少遅れてしまったため、24年度はレーザーを長時間使用する予定であり、多くのフラッシュランプが必要となる予定である。また、アーク放電の現象をより実際の遮断器に近づけるため、電源の電圧や電流の増強を行う。あわせて、電極も特殊な材料で製作を行う。これら、放電生成のための部品や材料に、相当の費用が必要となる。電極製作では、関係する材料や機器のメーカとの技術的打ち合わせを行う。さらに、研究結果を発表するために学会参加のための費用が必要となる。SF6に替わるガスの模索を行うため、二酸化炭素等のガスの購入が必要となる。24年度の予算は、以上の様な内容について使用していく予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 金属蒸気混入アーク放電の電子温度・電子密度計測2011

    • 著者名/発表者名
      吉武 真弥, 富田 健太郎, 内野 喜一郎, 竹中 大悟, 戸田 弘明, 匹田 政幸, 鈴木 克己
    • 学会等名
      第64回電気関係学会九州支部連合大会
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2011.9.27

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公開日: 2013-07-10  

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