研究課題/領域番号 |
23760269
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
柴 建次 東京理科大学, 基礎工学部, 准教授 (10343112)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハイパーサーミア / 癌 / 電磁界 / 電極 / 絶縁 / 電力伝送 / 経皮 |
研究概要 |
本年度の課題としては2つ挙げており,(1)加熱電極の周波数と出力電力の検討,(2)電極の検討と絶縁シートの検討がある. (1)においては,電磁界解析ソフトを用いて,膵臓と5~6種類の周辺臓器を一体化したモデルを対象としたSAR解析(電力吸収率の解析)を行った.1MHz~1GHzまで解析を行い,その結果,1~30MHzにおいて,加温対象部位のみを局所的に高いSARにできることがわかった.特定の周波数以上になると,ポットスポットができてしまったり,また加温対象以外の臓器のSARを大きくしてしまうこともわかった.また,刺激作用の指標となる体内電界についても同時に解析を行い,刺激作用がなく,かつ,加熱できる周波数範囲も明らかにすることができた. また,(2)においても,絶縁シートの有無により,他の対象臓器以外の臓器のSARがどの程度減少するかを電磁界解析を用いて調べた.絶縁シート厚は,最も薄い部分では2mm,厚い部分では5~10mm程度とした.その結果,10mm程度厚みがあると,他の臓器へのSARは大きく減衰し,本方法が有用であることがわかった. さらには,本年は,2年目で計画している,経皮電力伝送との組み合わせについても,一部検討を行った.受電コイルの形状を新しくした経皮電力伝送を考案し,これと上記の電極と組み合わせた電磁界解析を行った.周波数は1~10MHzの間とした.膵臓深部のみを局所的に30W/kg以上とするような電力供給ができるか検討したところ,提案システムで十分に可能であることを証明することができた.この成果と上記の成果の一部を組み合わせて,2012年4月6日に特許を出願した(特許出願前につき,本年は学会発表,論文発表の一部を中止していた).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画の8割程度と,2年目の計画の1-2割近くを,初年度で達成できたため.
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに行う.(3)「経皮電力伝送と組み合わせた加温実測実験」を中心に行う.特に,受電コイルの形状等は特許で出願した新しい方式のものについて検討を行う.次年度研究費が生じた理由としては,購入を予定していたネットワークアナライザを,他予算で購入したためである.翌年度は加温実験の際に必須となる,『温度分布を測定する装置』がないため,ここの購入に利用したいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は,(1)の「SARから温度に変換するための熱伝導解析」と,(2)の「絶縁シートの種類の検討」が,実施できなかった.このため,次年度には,上記の(3)「経皮電力伝送と組み合わせた加温実測実験」に加え,(1)(2)で残された課題も実施する.特に,加温実測実験においては,伝送効率測定よりも,コイルの温度等が高いと利用できなくなるため,受電コイル,送電コイル,加温対象部,加温非対象部などの温度測定を中心に行いたいと考えている.そのため,サーモグラフィ等の温度測定器を購入予定である.また本年は,1年目で得た成果を,日本ハイパーサーミア学会の国際会議で発表する予定である.
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