北陸地方から東北地方にかけての冬季の雷は,世界的にも規模が大きいことで有名である。実際に,平均的な夏季の雷に比べて数十倍から数百倍の規模の雷が,同一の風力発電システムに1年間に数回落雷したことが観測されている。規模の大きな冬季の雷が風力発電システムに落ちた場合,まず壊れてもっとも金銭的被害が大きい部分は,修理費用に数千万円が必要となるブレード(羽)である。そのため,ブレードの被害を最小限に抑えるための研究はいくつか行われてきた。しかし,電力変換器等の電力機器や発電機を制御するための制御機器等の被害も無視できない。このような被害が多数起きている風力発電システムが多いにもかかわらず,電力・通信・制御機器の設置位置・方法の多様性から,雷被害の発生様相は未だ明らかとなっていない。 平成23年度に可搬式のインパルスジェネレータを製作,実機風力発電システムの数値電磁界解析の準備を行った。平成24年度は,すでに実験が了承されていた単機の風力発電システムで実験を行い,数値電磁界解析を用いてその過電圧発生様相を解明することができた。平成25年度では,すでに実験が了承されている連接接地された2基の風力発電システムを用い,実験を行い,数値電磁界解析を用いてその過電圧発生様相を解明することができた。今回の研究では風力発電システムの個々の接地特性だけではなく,それらを連接する接地線の影響を考慮に入れた過電圧発生様相を解明することができており,この成果は今後,ウィンドファーム等複数の風力発電システムが連接接地されている様な状況における雷被害発生様相の解明に役立つと考える。
|