研究課題/領域番号 |
23760275
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松友 真哉 新居浜工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (90413856)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電磁場可視化 / 拡張現実感 / 電磁場解析 / 有限要素法 / コンピュータシミュレーション / 電磁気学教育 |
研究概要 |
本研究は、実験とシミュレーションを融合させた半仮想実験システムを提案し開発することを目的としている。近年の電磁場シミュレーションに関連する技術は極めて高度化されてきており、今後も大規模化・高精度化を目指した研究が盛んに行われていくものと思われる。これに対して、本研究は、リアルタイムに電磁場シミュレーションを行い、対象物と電磁場分布を観察者に提示する半仮想実験システムを構築することで、電磁場シミュレーション技術の新しい発展性を提案するものである。このようなシステムを早期に提案することで、電磁場シミュレーション技術及び、拡張現実感技術の双方の分野に新しい応用の可能性を示唆することができると考える。 本年度は、研究初年度にあたり、拡張現実感技術と電磁場シミュレーション技術を応用した電磁場教育に有用な半仮想実験システムの基礎的な構築を行った。この基礎的な検討システムでは、(1)カメラで対象となるコイルや磁石を動画撮影し、(2)対象物が何であるかを画像認識を用いて識別する。そして、(3)識別された対象物をモデル化し計算機シミュレーションによる電磁場解析を行い、(4)撮影された対象物と電磁場解析で求まった等電位線や磁束線を重ねて描画し学習者に提示する。これらの要素技術の検討によって、(i)対象物とその周辺に分布している電磁場が正にその場に分布しているように観察することが可能となり、(ii)対象物を実際に手で移動させた際に電磁場が変化する様子もリアルタイムで観察可能であることを確認した。 これらの検討内容は、国内外の学会で発表を行い、電磁場シミュレーション技術の新しい発展性を早期に提案するという当初年度の目標は達した。さらに、このシステムを中学校での理科教育へ活用する可能性も探るべく、実際に中学生に本システムを体験してもらい、その教育効果を検証する試みも開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、電磁気学教育の初段階で活用可能な、「拡張現実感技術を利用した電磁場可視化システム」の基礎開発を行った。拡張現実感技術は、近年様々な分野に応用されている手法で、ウェブカメラ等の撮影機器で撮影された現実世界に、文字や図形などの情報を付加した拡張現実世界をユーザに提示する技術である。本年度の検討では、対象物(例:磁石、コイルなどのモック)をウェブカメラで撮影し、撮影対象とその磁束線分布をリアルタイムで重ねて描画することで、初学者に磁場を観察させることが可能であることを検証した。これにより、ユーザは拡張現実世界において、磁場を観察し学習することができ得ることを示した。さらに本システムでは、ユーザはモックを自由に移動・回転させることができ、さらに磁石と線電流などの複数のソースが作る磁場が干渉する様子もリアルタイムで観察可能な手法を提案した。また、磁束線を高速かつ精度よく描画するために、磁束線を用いたアダプティブ有限要素法に関する提案も行った。 これらの研究成果を、学術論文2件、国際学会2件、国内研究会2件で発表を行い、その研究成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえ、(1)磁性体を含む解析領域でのリアルタイムシミュレーション(2)3次元空間内に配置された対象物とその周辺の電磁場を重ねて描画、の2点の実現を目標とする。3次元電磁場シミュレーションは、2次元電磁場シミュレーションに比べて格段に計算コストがかかり、アダプティブ有限要素法を採用してもリアルタイムで解析を実行することは不可能であることが予想される。そこで、3次元空間を対象とした半仮想実験システムでは、あらかじめ対象物が移動した複数ケースの電磁場シミュレーション結果をデータベースとして保有しておき、対象物の位置状態に応じてデータベースから類似の状態を検索し、補間によって解析結果を推定することでリアルタイム性を実現するという工夫を行い検討する。このために、複数の計算機からアクセスできる電磁場シミュレーション結果データサーバを立ち上げ、端末となる計算機では、画像入力および画像合成・出力を行うのみとし、計算負荷を軽減する。解析結果のデータサーバとしては、新規に備品として購入するものを使用し、膨大な量になることが予想される解析結果データを蓄積する方法を検討する。さらに、3次元可視化装置を購入し、臨場感のある3次元磁場観察システムを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当年度は、3次元空間中に対象物が存在するときの半仮想実験システムの開発についての成果と課題等を明確にし、随時、国内学会や研究会、国際学会(CEFC 2012)において発表する予定である。本研究では、計算機を利用した半仮想実験システムの構築を目的としているため、その研究の大半を計算機によるプログラム開発が占めることになる。また本システムでは、画像認識、画像描画等が高速に実現できる必要があり、これを実現するための設備備品としてマルチCPU及び高性能グラフィックカード搭載した計算機を購入し、システム開発環境を整備する。また、3次元空間中に存在する対象物を画像認識して高速に電磁場シミュレーション結果と合成の合成画像を得るために、電磁場シミュレーション結果を蓄えておくサーバを必要としておりこれを購入する。 なお、初年度にシステムのプログラム開発を重点的に行い基礎的な検討を行ったため、3次元解析のための計算サーバの購入を行っていない。このため、次年度の研究費と合わせて、計算サーバを購入する。また、3次元の可視化装置を購入し、より臨場感のあるシステムの構築を検討する予定である。 すなわち、次年度研究費については、計算機サーバの購入、3次元の可視化装置の購入、国際学会参加費、国内旅費、論文投稿料に使用することを計画している。
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