研究課題/領域番号 |
23760279
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
清水 英彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00313502)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 調光ミラー / マグネシウム / パラジウム / 希釈水素ガス |
研究概要 |
本研究では,Mg系調光ミラーデバイスを表示素子として応用するための基礎研究を行うことを目的としている。これを実現するために,平成23年度は,既存のMg系薄膜の特性の検討及び,Mg系薄膜を用いた表示デバイスのために,Mgに組み合わせる新規材料の検討,探索を行うことを計画していた。そこで,Mg系薄膜の上に水素分離層として堆積しているPd超薄膜に注目し,希釈水素ガス雰囲気中におけるMg-Ni薄膜の透過率及びスイッチング特性についての検討を行った。その結果,Pd膜厚が5nmの場合,希釈水素ガス雰囲気の圧力,2.0kgf/cm2にて,最も透過率が高くなるとともに,10秒程度の短時間にて透過率が変化していることが分かった。これらのことから,希釈水素ガス雰囲気においてMg系薄膜の調光ミラー特性を向上させるためには,水素分離層として,Pdをより機能させるために,Pd膜厚を十分に調整する必要があることが分かった。次に,Mg-Ni薄膜の上にPd超薄膜を堆積させたデバイスの複数回水素化及び脱水素化を行い,可視光を反射する状態と透過する状態の特性についての検討を行った。その結果,初回の水素化では,最終的な透過率は約5%までしか上昇しなかったのに対し,2回目以降の水素化では,透過率が約20%以上まで上昇することが分かった。また,4及び5回目の水素化により透過率は約25%と最も高くなっていることがわかった。一方,スイッチング速度は,スイッチング回数が増えるほど遅くなる傾向にあることが分かった。また,5回目の水素化以降はスイッチング速度が急激に緩やかになっていることも分かった。これらのことから,この原因についても,より検討を進める必要があることが分かった。上記の検討を行った結果,予想していない問題が出てきたため,平成23年度に予定していた,Mgに組み合わせる新規材料の検討,探索を行うことができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スイッチングを行うことにより,特性に大きく違いが出る問題が出てきたため,その原因を調べるために当初の計画通りに進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に,実験をよりペースアップするため,中古の分光光度計の購入を行った。これにより,予約等を行わずに,いつでも光学的特性の測定を行えるように対策を行った。また,スピンコート法による有機材料薄膜の作製だけでは,膜厚制御が難しくなることが予想されることから,新たにディップコート法による有機材料薄膜作製もできるように平成23年度末に部品の購入及び設計を行った。これらのことから,平成23年度に実施できなかった計画を行うとともに,平成24年度に予定している計画を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に予定していた研究に必要なターゲットや有機材料等を購入する。旅費については,応用物理学会や電子情報通信学会研究会などにて研究成果を発表するために使う予定である。さらに,作製した膜の分析のために東京工芸大学行くためにも使う予定である。印刷費及び研究成果投稿料は,研究の成果を,区切りの良い所までまとめ,論文として投稿するのに使用する予定である。
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