研究課題/領域番号 |
23760282
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 佑介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10512759)
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キーワード | 不揮発性メモリ / 抵抗変化 / 酸化物 / スパッタ / フォーミング |
研究概要 |
今年度は主に、1.TiO2薄膜を用いたReRAM素子における電極金属材料の抵抗スイッチングの極性への影響、Pt/NiO/Pt積層構造素子における 2.NiOの酸素組成とNiO薄膜にかかるひずみおよびフォーミング電圧との相関、3.定電圧印加時およびランプ電圧印加時におけるフォーミング特性の時間依存、に関して検証した。 TiO2薄膜を用いたReRAM素子として、下部電極にはPtを、上部電極にはPt・Ag・Alを用いた。上部電極にPtを用いた場合が最も安定なノンポーラ型の抵抗スイッチングを示した。一方、上部電極にAgを用いると、電極材料であるAgがフィラメントとして機能するCBRAMとしての動作で、バイポーラ型の抵抗スイッチング特性を示すことがわかった。上部電極にAlを用いた場合、負バイアスを印加した場合フォーミングオフとなることが示された。 一方、Pt/NiO/Pt積層構造素子においては、NiOの酸素組成が大きくなるに従い、多結晶であるNiOが<111>方向に大きくなるような二軸性の圧縮ひずみが大きく加わるようになり、フォーミング電圧が増大する傾向が示された。また、フォーミング特性評価として、定電圧印加時に加えてランプ電圧印加時のフォーミング時間依存を調べ、これらの相関を調べた。ランプ電圧印加を用いても、フォーミング時の導電性フィラメントの起源である点欠陥がポアソン分布に従うことが示され、また膜厚依存性よりこの形成領域が堆積されたNiO薄膜の膜厚に比べて十分に薄いことがなどが、改めて示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、抵抗変化材料であるNiOおよびTiO2の半導体としての基礎物性に着目し、抵抗スイッチングの普遍的なメカニズムを解明し、実デバイスとして用いる際のばらつき低減に関するモデルや手法を提案することを目的としている。酸素不足型のTiO2薄膜において、抵抗スイッチング特性に対する電極材料の影響を精査し、電極材料とTiO2薄膜の界面における酸化還元反応、およびAgが電圧印加に応じて移動しうる現象を確認しつつある。また、金属不足型のNiO薄膜を用いたPt/NiO/Pt積層構造において、フォーミングとNiO薄膜にかかるひずみとの相関や導電性フィラメントの起源の分布などが明らかになりつつある。したがって、事業期間を通した計画に対して、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ReRAM素子の微細化技術を確立すべく、クロスバー型構造による微細構造の作製、および作製条件が抵抗スイッチング特性に悪影響を及ぼさないかどうかを検証する。また、フォーミング特性とひずみとの相関に関して、より詳細な構造評価をすべくTEM観察およびTEM-EDXなどを用いる。さらに、抵抗スイッチングの本質的な低温特性(真空中ではない)、およびガス雰囲気の抵抗スイッチング特性への影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ReRAM素子微細化のため、フォトマスクおよび比較用のメタルマスクを設計・購入する。また、外部評価としてのTEM分析を依頼する。さらに、各種ガス雰囲気下での測定が可能となるようなプローバの設計を実施し、測定環境を構築する。そのほか、研究成果の対外発表および調査に伴う旅費に使用する予定である。
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