研究課題/領域番号 |
23760284
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
堀田 昌宏 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50549988)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 薄膜トランジスタ / ゲルマニウム / シリコン / レーザーアニール / 結晶化 |
研究概要 |
薄型ディスプレイの画素表示には,薄膜トランジスタ(TFT)が用いられている.TFTは,プロセス温度に制限があるため,ICデバイスと比較するとチャネル移動度が低く,用途はディスプレイの画素駆動にとどまっている.高性能・多機能ディスプレイ実現のためには,TFT チャネル移動度の向上とプロセスの低温化が必須である.本研究では,独自のレーザーアニール技術を用い,高移動度を示すゲルマニウム(Ge)において,欠陥を極限まで低減した単結晶薄膜を非晶質基板上に低温にて形成することを目指す.単結晶Geの低温形成には,2009年宮尾らによって報告されたSiGeミキシング溶融結晶成長をレーザーアニールによって実現することで行う.SiGeミキシング溶融結晶成長は,幅数μmにパターニングしたGeの一端に種結晶となるSiを配置し,ランプアニールを行うことによって,パターニングされたGeが長さmmオーダーで単結晶化する技術である.これをレーザーアニールによって実現するには,熱エネルギー供給,放出の制御によって,アニールによる局部的な温度変化を精密に制御する必要があり,申請者は,これらの制御がSiやGe,絶縁膜であるSiO2の積層構造を形成することによって可能であると考えた.本研究では,まず,Geを堆積できる装置を立ち上げるところから取り組み,既存のSiO2堆積装置,パターニングのためのリソグラフィ装置を活用しつつ,積層構造試料を作製し,この試料に対してレーザーアニールを行い,単結晶Geを形成できる条件を探索する.また,単結晶Geが実現できれば,デバイス応用を目標として,Ge TFTの作製条件の検討を行い,TFTの実現,高性能化を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては,まず,Ge堆積装置が必要となる.本年度は,外部機関でGe堆積を依頼し,Ge結晶化条件の検討を行うとともに,Ge堆積装置の立ち上げに取り組んできた.Ge堆積装置を購入し,既存の真空装置にインストールすることで使用可能になる予定であったが,必要となる周辺機器の準備に費用および時間を要した.このため,当初,Ge堆積装置とともに予定していたSi堆積装置の購入は断念し,Ge堆積装置の立ち上げに注力した.本研究において必要となるSi薄膜堆積は,既存で所有するSiスパッタ装置で,部分的に代用可能であると考えている.当初研究計画より時間は要したものの,Ge堆積装置の立ち上げはほぼ完了し,Ge堆積を行うことが可能な状態になりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
Ge薄膜が堆積可能になったことから,今後は,Ge,SiおよびSiO2堆積を行い,積層構造試料を作製した後,レーザーアニール条件の検討により,単結晶Geまたは大粒径多結晶Geを実現を目指す.さらに実現した結晶Geを用いたTFT作製条件の検討を行い,実際に動作するGe TFTを実現することによって,結晶Ge形成として本手法が有用であることを示していきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額が生じた要因は,研究の進捗状況に合わせ,予算執行計画を変更したことに伴うものである.次年度は,装置の購入予定はなく,試料作製において必要となる消耗品を購入する予定である.また,本研究において,一定の成果が認められた時点で,当該研究費を利用して,学会や学術論文での発表を行う.本年度未使用額(81千円)を含めた次年度の研究費(781千円)の使用計画は以下の通りである.物品費:231千円,旅費:450千円,謝金:0円,その他:100千円
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