薄型ディスプレイの画素表示には,薄膜トランジスタ(TFT)が用いられている.TFTは,プロセス温度に制限があるため,ICデバイスと比較するとチャネル移動度が低く,用途はディスプレイの画素駆動にとどまっている.高性能•多機能ディスプレイ実現のためには,TFT チャネル移動度の向上とプロセスの低温化が必須である.本研究では,独自のレーザーアニール技術を用い,高移動度を示すゲルマニウム(Ge)において,欠陥を極限まで低減した単結晶薄膜を非晶質基板上に低温にて形成することを目指す. 単結晶Geの低温形成には,2009年宮尾らによって報告されたSiGeミキシング溶融結晶成長をレーザーアニールによって実現することで行う.SiGeミキシング溶融結晶成長は,幅数mにパターニングしたGeの一端に種結晶となるSiを配置し,ランプアニールを行うことによって,パターニングされたGeが長さmmオーダーで単結晶化する技術である.これをレーザーアニールによって実現するには,熱エネルギー供給,放出の制御によって,アニールによる局部的な温度変化を精密に制御する必要があり,申請者は,これらの制御がSiやGe,絶縁膜であるSiO2の積層構造を形成することによって可能であると考えた. 昨年度は,Geを堆積できる装置を立ち上げるところから取り組み,Ge薄膜の堆積,結晶化に成功した.さらにこのGe薄膜に対して,パターニングを行い,レーザーアニールを施すことによって,単結晶Geを実現する方法を検討した.当初予定していた,グリーンレーザーアニールによる結晶化法に加えて,新たな手法として炭酸ガスレーザーアニールによる結晶化方の検討も行った.
|