研究課題/領域番号 |
23760285
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
板垣 奈穂 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (60579100)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エキシトニックトランジスタ / ピエゾ電界 / 酸化物半導体 / 酸窒化物半導体 / 量子井戸 / 結晶成長 / スパッタリング |
研究概要 |
本研究は、酸(窒)化物半導体を用いて室温動作可能なエキシトニックトランジスタを創成することを目的としている。平成23年度は、高効率エキシトン流生成のためのデバイス構造の検討、および酸(窒)化物半導体材料の高品質化のための実験を行った。 高効率エキシトン流生成のためのデバイス構造については、従来トレードオフの関係にあった"高いエキシトン束縛エネルギー"と"低いエキシトン再結合確率"を両立させる構造として、ピエゾ電界誘起型量子構造を考案した。デバイスシミュレータを用いて上記量子井戸構造(井戸層:ZnInON、障壁層:ZnO)におけるエキシトン再結合レートを計算した結果、従来構造に比べ再結合レートが約3桁低くなることが分かった(再結合寿命~1μsec)。これは上記ピエゾ電界誘起型構造では、量子井戸内における強い内部電界により電子―ホールの波動関数の空間的重なりが小さくなるためである。以上の結果は、室温でのエキシトン流の高効率生成が可能であることを示している。 酸(窒)化物半導体材料の高品質化については、プラズマ中酸素/窒素ラジカルの制御、および、独自に考案した不純物添加法による結晶核発生制御、の2つのアプローチにより行った。その結果、量産性に優れたスパッタリング法によっても、高品質なZnO膜およびZnInON膜を作製することに成功した。ZnO膜においては、残留キャリア濃度を10^16cm^-3まで低減できることが分かり、本手法が酸(窒)化物膜の高品質化に非常に有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では室温動作可能なエキシトニックデバイスの実現を目的とし、(1)新規酸窒化物半導体高品質結晶成長、および(2)エキシトン流生成の実証、の2項目について研究を行っている。新規に考案した結晶核制御技術により、現在までに項目(1)を実現している。項目(2)については、デバイスシミュレーション等を行い、本提案のピエゾ電界誘起量子井戸構造が、エキシトン流の高効率生成に非常に有効であることを示した。今後(1)により得られた高品質半導体膜を用いて(2)の量子井戸構造を形成することにより、高温でのエキシトン流の実証を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 新規酸窒化物半導体高品質結晶成長については、プラズマ発生をパルス的に行うことで、更なる高品質化を目指す。具体的にはラジカル源によるO/N原子照射とIn/Znのスパッタリングとを交互に行い、高エネルギー粒子を間歇的に供給することで基板上での原料拡散を促し高品質結晶を成長させる。(2)エキシトン流生成の実証については、ZnInON/ZnO量子井戸構造を形成し、エキシトン再結合による発光の2次元分布と励起用レーザー照射位置を測定することで、エキシトンの寿命、拡散長および移動経路を明らかにする。上記2つのアプローチにより室温動作可能なエキシトニックトランジスタの実現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
(消耗品)酸窒化物半導体量子井戸構造の形成のため、スパッタリングターゲット、エピタキシャル基板、等を計上する。(旅費) 研究成果を発表し、国内外の研究者と討論するために、国内出張旅費と海外出張旅費を計上する。(その他) 本研究の遂行には膜中窒素濃度の測定が不可欠である。窒素濃度の絶対値測定にはラザフォード後方散乱(RBS)分析が適しているが、申請者が使用出来るRBS分析装置は無い。そのため外部分析委託費を計上する。また、論文印刷費を計上する。
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