希土類系高温超伝導体の高臨界電流密度化(高Jc化)に向けて,現在最も有効なピンである1次元ピン(線状の格子欠陥や不純物)の更なる高機能化を図るために,この1次元ピンを補助するアシストピンの同時導入を試みた.平成25年度においては,高温超伝導薄膜のc軸方向に導入した1次元ピンに対するアシストピンとして重イオン照射により導入した交差した柱状欠陥の磁束ピンニング特性について,重点的に調べた.c軸に対して小さな角度で交差した柱状欠陥を導入した場合,磁場をc軸方向付近に印加したときJcが急峻な増加を示すピークを示した.一方,ab面に対して小さな角度で交差した柱状欠陥を導入した場合では,磁場をab面方向付近に印加すると,柱状欠陥の導入方向,すなわち照射方向においてJcのピークが現れるが,照射方向の中心となるab面方向においてはJcは逆に減少し,窪みが生じた.交差角を±15°に狭めた場合においても同様な振る舞いを示した.ab面に対して±15°までと小さな交差角で柱状欠陥を導入した際のJcの磁場角度依存性を詳細に調べた報告はこれまでになく,c軸方向でみられる交差した柱状欠陥によるスプレイ効果がab面方向においては生じていないことを本研究において初めて明らかにした.このことは,全磁場方向のJcを改善するにあたって,各磁場方向に有効に作用するピン止め点を選定し,それらを組み合わせてデザインする上で非常に重要である.
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