研究課題/領域番号 |
23760292
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
三宅 弘晃 東京都市大学, 工学部, 講師 (60421864)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 半導体センサ / 帯電計測 / PEA法 / プロトン照射 |
研究概要 |
【半導体センサ作成】申請者が発案した半導体の空乏層を利用した圧力波検出が可能か、原理再確認のため、PN接合半導体素子(センササイズ: 20 x 20 [mm]、注入イオン :BF2+, 25keV, 3x1015 [cm-2]、アニール温度:1000°, 10min)を作成した。開発した素子に、圧力は発生装置を接触させ、直接2nsの半値幅を持つパルス圧力波を開発素子に入力し出力信号の検出を行った。測定装置の構成は以下の通りで、信号の発生・検出順に示している。(1):パルス電圧発生器、(2):圧力波発生装置、(3):測定試料台(開発素子)、(4):信号増幅器(0.1k-2GHz, 35dB)、(5):オシロスコープ。(1)は電圧発生と同時にトリガ信号を出力し、そのトリガ信号に基づいて波形の計測を実施している。その結果、出力信号のピーク値として以前の試作と同様の5mVの信号を確認することができた。以前の試作では45dBの増幅器を通して信号を取得していた為、今回の試作により信号強度は10dB程度上昇し、S/N向上の確認が出来た。【プロトン照射材料の帯電計測】プロトン照射をポリイミド試料に実施し、照射中後の材料内部の帯電分布計測を実施した。1.0-2.0MeV、0.3-30nA/cm^2の範囲の条件での測定は全て終了することができ、プロトンの飛程と帯電分布、及び帯電量と照射電流密度の相関を取ることができた。さらに高電流密度で照射した試料では帯電量が照射直後に飽和し減少し始める傾向が観察されたため、照射済み試料を用いてASTM法を用いて伝導電流計測を実施し、放射線誘起伝導の発生を確認した。この結果より照射中の材料内電荷挙動について、電気物性的な解析を行う事が出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【半導体圧力波センサの開発】PN接合やMOSキャパシタをドープ濃度及び基板濃度(1x1015 cm-3 ~ 1x1018 cm-3)や感度領域サイズ・形状などを調整し、ドープ濃度を一桁単位で調整し素子を作成し圧力波検出試験を実施する事が当該年度の実施計画である。本研究に用いる半導体の素子試作は全て東北大の未来科学技術共同研究センターの半導体製造設備を用いて行っているが、震災により設備が被害を受けたため、素子試作が12月頃と大幅にずれ込んだが、厚さ及び形状を0.1~20mm四方とサイズを変更し、ドープ濃度も10^15、10^18cm^-3素子の作成を実施することができ、試作素子による圧力波検出と出力信号の向上が確認できた。【陽子線照射衛星材料の帯電物性】1:照射前―照射中―照射後と連続的に既存のPEA法を用いて帯電計測、2:課電粒子の蓄積・開放過程に関する物性解析およびモデリング実施、3:0.03 nA/cm2を中心に各エネルギーでの照射測定 以上の測定を、PIフィルムに対して実施することが当該年度の実施計画である。震災により一部、加速器の使用が不可能になってしまったため、0.03nA/cm^2の条件では実施が出来なかったが、0.3nAまでの測定で実施し照射中から照射後にかけての電荷分布計測及び照射済み試料を用いてASTM法を用いて伝導電流計測を実施し、帯電挙動の物性解析できた。これは予定通りの成果である。以上より、「おおむね順調に進展している」という評価をした。
|
今後の研究の推進方策 |
【半導体圧力波センサの開発】圧力波発生装置のセンサへ接触・固定する治具に問題があり、すべての試験において接触・固定条件を一定にすることができなかった。そこでH24年度は治具の改良を行い、センサへの入力圧力を一定にできるよう改良する。また、1inchウェーハ上に様々なサイズの素子をまとめて作成を行った。こちらの素子の信号取得を容易にするため、試作素子をパッケージに設置し、パッケージから専用基板を作成する。さらに、H24年度は試作素子の圧力波検出のためのS/N向上のためのパラメータを同定すること目的とした素子試作を実施する。さらに、本試作素子を帯電計測に応用することが最終目的であり、そのための測定信号の取得系(具体的には、増幅器一体型やA/D素子一体型など)の検討を実施する。【陽子線照射衛星材料の帯電物性】H23年度はプロトン照射済みのPI試料に対して伝導電流計測を実施し、帯電挙動に放射線誘起伝導が関与していることを明らかにした。H24年度はプロトン照射試料を作成し、照射後に大気圧下で直流高電界を印加し、PEA法により材料内の帯電分布の計測を行う。試料内は照射プロトンにより分子構造の切断等でキャリアが大量に発生していることが予想され、電界印加により試料内に正負の分極電荷の観察あるいは照射面側からの電荷の注入が観察され、その量は照射線量に依存するものと予想される。さらに、プロトン照射中の帯電分布をPEA法にて測定してきたが、照射側の試料面を金属蒸着を施す必要があったが、これが宇宙機の実態と測定いないため、宇宙機運用時の実態に合った材料の電気物性を検討することが必要であるため、照射面側の金属蒸着を施さずに材料内部の帯電分布を測定できるようPEA法の測定装置の改良を実施し、帯電計測時における金属蒸着の帯電分布への影響を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H23年度からH24年度に44万円ほど繰越をしている。これはH23年度における素子の試作が震災の影響もあり、第4四半期にずれ込んだため、測定感度向上のための測定冶具の改良まで着手が出来なかったためである。そこでH24年度では前述の冶具改良も含めて実施を行う。よって研究費は以下の要領で執行をする。尚、()内は執行予定時期を示している。1:物品・消耗品費として、半導体圧力波センサの開発のため、(1)測定治具の改良のための金属加工費(第1~2四半期、H23の繰越も含む)、(2)素子のパッケージ化、パッケージ設置基板の作成(第1~2四半期)、(3)測定信号取得系回路の検討・施策回路の作成(第1~4四半期)を支出する。また、陽子線照射衛星材料の帯電物性の課題に、(1)PEA測定装置の改修(第1~2四半期)に支出予定である。2:旅費として、(1)東北大にて申請者が直接半導体素子試作を実施するため旅費(第2~3四半期)、(2)成果報告のための国際会議への出席費用(9、10月)を支出する予定である。3:その他の支出としては主に、陽子線照射衛星材料の帯電物性の課題の加速器の利用料(第3~4四半期)に支出する予定である。
|