研究課題/領域番号 |
23760295
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
仙波 伸也 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 准教授 (40342555)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MBE / スピントロニクス / 電子・電気材料 |
研究概要 |
フルエピタキシャル・スピンフィルタ強磁性トンネル接合におけるトンネル磁気抵抗比の改善を目的に反強磁性ワイドギャップ半導体を付加挿入した接合の作製とその評価を目指し、分子線エピタキシー法を用いて薄膜成長を行った。当初、基板としてBaF2を予定していたが、その表面に存在するへき開ステップが積層構造の断片化をもたらす可能性が高いことが実験的に明らかになってきたため、基板をInPに変更した。これまで培ったBaF2基板上への成長条件をベースとし、加えて基板の表面清浄化のための熱処理過程を工夫することにより、強磁性層Ge1-xMnxTeの薄膜成長に成功した。熱処理過程においては、処理中におけるTe照射がもたらす基板表面の清浄化効果が高いことが明らかになった。薄膜の構造評価は反射型高速電子回折、X線回折で行い、また異常ホール効果や磁気抵抗の温度依存性の観測から磁気的特性を評価した。また、InP基板上へのEuS薄膜の成長にも成功した。さらに、閃亜鉛鉱型(ZB-) MnTe薄膜の成長条件について、基板温度等を変えながら調べてきた。積層構造を作製するまでには至っていないが、各単層膜の成長条件に関しては比較的十分な知見を得ることができた。一方、強磁性層間の磁気結合力と反強磁性膜の膜厚との関係を調べるために、磁気光学Kerr効果測定装置の改良を進めた。光弾性変調器を導入し、ロックインアンプで増幅することにより、室温にて標準試料の縦Kerr効果を観測できたが、SN比は十分とは言えず、今後さらなる改善に努める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では基板としてBaF2を用いる予定であったが、その表面に存在するへき開ステップが積層構造の断片化をもたらす可能性が高いことが実験的に明らかになってきたため、基板をInPに変更した。そのため、各薄膜の成長条件を見直すために時間を要し、計画の積層構造を作製するまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
基板をBaF2からInPに変更したため、積層構造の作製までには至らず、素子評価のための量産化が進まなかった。そのため基板・原料の消耗が抑えられ、研究費を繰り越すことになった。今後は、計画の手順に従い、基板のみをInPに変えたフルエピタキシャル・スピンフィルタ強磁性トンネル接合の作製及び特性評価を遅れを取り戻すべく推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
変更したInP基板は計画していた基板よりも高価である。繰り越した研究費と合わせて物品費は主に計画通りの基板・原料等の消耗品購入に使用する。また、研究協力者との打ち合わせのための旅費が増える見込みである。
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