研究課題/領域番号 |
23760295
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
仙波 伸也 北九州工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40342555)
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キーワード | MBE / スピントロニクス / 電子・電気材料 |
研究概要 |
フルエピタキシャル・スピンフィルタ強磁性トンネル接合におけるトンネル磁気抵抗比の改善を目的に、反強磁性ワイドギャップ半導体を付加挿入した接合の作製とその評価を目指し、分子線エピタキシー法を用いて各種薄膜の成長実験を行った。初年度の実績により基板をBaF2からInPに変更して薄膜成長を進めた。基板の表面清浄化のための熱処理過程を工夫することにより、所望の単層薄膜に関しては良好な成長を実現できたため、積層構造:Ge1-xMnxTe/ZB-MnTe/EuSを、基板温度や照射蒸気圧等の成長条件を変えながら作製し、反射高速電子線回折及びX線回折を用いた構造評価を行った。しかし、積層構造においては期待しているほどの良質なエピタキシャル膜が得られず、更なる改善が要求される。良好な結果が得られない一要因として、原子配列の観点からInP基板の面方位が成長に影響している可能性があることが分かり、面方位を(100)から(111)に変更することに決め、準備を進めている。リソグラフィによる素子加工に関しては、研究協力者とともにウェットエッチング等の条件について実験的に調べ、おおよその条件に関しては見出すことができた。一方、強磁性層間の磁気結合力と反強磁性膜の膜厚との関係を調べるための磁気光学Kerr効果測定装置の改良については、振動除去と磁場安定性の向上、光学素子の再選定を行い、SN比の改善は進んだが、冷凍機の不調により極低温測定には至っていない。現在、冷凍機が復旧し、評価実験の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
反強磁性層の膜厚を変えた積層構造を作製し、磁気光学効果による磁気特性評価実験を行い、強磁性層間の磁気結合に及ぼす反強磁性層の影響に関する検討については、積層構造を作製するという計画は達成できているが、良質な試料を得られていない。また、磁気光学効果測定装置の改善は進んだが、冷凍機の不調により評価実験には至っていない。以上の理由より、「やや遅れいている」と判断した。一方、素子加工条件の検討については研究協力者の支援のもと、計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
使用するInP基板の面方位を(100)から(111)に変更し、良質な積層構造の作製を目指し、遅れを取り戻すとともに、平成25年度計画に沿って研究を遂行する。必要に応じて、熱処理過程にV族分子線照射の付加も検討する。不調であった冷凍機の点検・修理も平成25年5月中旬には完了するため、評価実験を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
面方位変更に関して、基板の仕様策定は完了しメーカーに依頼しているが、年度内での納期が間に合わず、その購入経費を繰り越すことになった。また、予期せぬ冷凍機の不調が生じたため、点検・修理費を確保するため、消耗品の購入を抑え、繰り越した。繰越金に関しては前述通り使用計画があり、平成25年度経費に関しては計画通り有機溶剤や原料等の消耗品購入に使用するが、データ整理・解析に必要なPCを追加購入する予定である。
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