研究課題/領域番号 |
23760296
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
舘林 潤 東京大学, ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構, 特任助教 (40558805)
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キーワード | ナノワイヤ / 量子ドット / 単一光子発生 / 太陽電池 / InAs/GaAs / 高均一 / 多積層 |
研究概要 |
本研究は半導体ナノワイヤを用いた単一光子発生器及び高効率太陽電池の実現に向けた結晶成長技術の確立及びデバイスの動作実証を目的とする。具体的には、研究代表者が前年度まで培った単一光子発生器応用に向けたGaAs基板上ナノワイヤ量子ドットの結晶成長技術を元に更なる要素技術の確立を図るとともに、光学・構造評価を通じて積層ナノワイヤ量子ドットの形成メカニズムの解明を行った。さらに、ナノワイヤに量子ドットをを有する太陽電池構造を提案し、結晶成長・プロセス技術及び光学評価技術を確立しその動作実証を行った。 本年度は昨年度に引き続き東大ナノ量子機構・荒川研究室の特任助教として研究を進めてきた。研究内容に関しては、積層量子ドットをナノワイヤ中に埋め込む構造を採用しその均一性制御技術を確立するとともに高効率太陽電池構造実現に向けたプロセス技術及び特性評価の研究を遂行した。 具体的には、積層量子ドットを有するナノワイヤ構造を作製するにあたり、本研究機構が有する電子線描画装置により40nm程度の微細パターン基板を作製し、有機金属気層成長法により位置制御されたナノワイヤを作製し多層ヘテロ構造を埋め込むことにより積層量子ドット構造を実現した。顕微フォトルミネッセンス法によりナノワイヤ中積層量子ドットの個々のエネルギー準位を制御する均一性制御技術を提案及び実証し、200層積層しても発光強度の損なわれない高均一・高品質ナノワイヤ積層量子ドット構造を作製することに成功した。更に積層ナノワイヤ量子ドットを有する太陽電池構造を作製するプロセス技術を確立するとともに、電気特性評価を行い光起電力を確認し太陽電池としてのデバイス動作を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的の一つに高効率太陽電池の実現があるが、直接遷移且つ既存の太陽電池作製技術と整合性のあるGaAs基板上にGaAsナノワイヤを成長し発光強度の強い高品質なInAs量子ドットを実現することに成功するだけでなく、基板材料であるナノワイヤの結晶成長技術を確立するとともにその成長ダイナミクスの解明を行った。また光学・構造特性により量子ドット構造の評価や光学特性を評価するだけでなく、室温での発光も確認していることから高品質の量子ドットがナノワイヤ中に形成されていることを示唆しているものである。さらに個々の量子ドットの均一性を制御する技術を確立する中で、基板材料であるGaAsナノワイヤの軸及び径方向の成長ダイナミクスを解明することに成功した。この結果はGaAsナノワイヤの形状・大きさを完全制御することが可能であることを示しており、ひいてはナノワイヤ中の量子ドットのサイズつまりエネルギー準位の完全制御に他ならない。本制御技術を用いることにより昨年度(50層)よりも積層数を格段に増やすことに成功した。実現した200層という数は現在までのところ世界一であり、本年度で得られた結果・知見無しでは実現し得なかっただけでなく、国内外のナノワイヤ研究者に大きなインパクトを与えた。加えてナノワイヤ量子ドットを有する太陽電池構造実現に向けた電極形成技術や埋め込み技術等プロセス技術を確立し動作実証を行った。これは研究当初に目的としていた太陽電池構造実現を十分達成できている。 以上のことから、本年度の研究は当初の計画以上に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は本年度当初の計画以上に進展しているとはいえ、本研究分野で世界的によりリードする成果を達成するためには当初の研究計画を超えて研究を推進していく必要があると判断し、事業期間延長の申請を行った。 材料系は引き続きInAs/GaAs系を用いて研究を進める。具体的には前年及び本年度の結果を元に更なるナノワイヤ量子ドットの高品質化と太陽電池の高効率化を目指し、世界一の効率を持つナノワイヤ太陽電池実現に向けて研究を推進する。成長条件を最適化することにより発光強度や均一性を改善するとともに、本年度で達成した200層を越える超多積層量子ドット構造を実現する。更に、既に本年度においてプロセス技術の確立と動作実証を行ったので、今後は太陽電池の効率を向上すべくプロセスの改善を行う。ナノワイヤ量子ドットを有する太陽電池はナノワイヤの特異な境界条件により従来の量子ドット太陽電池よりも更なる多積層化が可能になるだけでなく、キャリアの輸送方向と光の入射方向が直交するため特に量子ドット太陽電池で問題となっていたキャリアの取り出し効率が向上することが期待されており、ナノワイヤの持つ光マネジメント効果とも相まって効率が向上することが期待される。電圧電流特性やスペクトル応答特性など太陽電池の基本特性を評価することによりナノワイヤ量子ドットが存在することの効果を実証するとともに成長技術など要素技術へフィードバックをかける。 一方でナノワイヤ量子ドットを用いた単一光子発生器実現に向けても研究を進める。ナノワイヤ量子ドットは対称性の良い三回対称性を持つ(111)面上の結晶成長であるという特質上、従来の量子ドット単一光子発生器で問題となっていた微細構造分裂を抑制することが可能になることが示されており、量子もつれ光源への応用も期待されている。さらに微細構造分裂の抑制効果についても検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を推進するに当たり現研究機関ではナノワイヤ量子ドットの結晶成長に必要な半導体ウェハ及び原料ガスを在庫として十分に有することから新たに本年度消耗品として購入する必要が無かったため、剰余分が次年度繰越として生じた。また、本年度に透過電子顕微鏡による半導体ナノワイヤ量子ドットの構造解析を行い、ナノワイヤ量子ドット構造を有する太陽電池デバイスのデバイス特性評価を行った上で、国内外の学会及び論文において発表する予定であった。しかしながら、現状でも十分高品質のナノワイヤ量子ドットが得られているものの、構造解析を行うには更なる成長条件の最適化が必要であると判断し、構造解析は次年度に行うこととした。また量子ドットのデバイス特性評価及びスペクトル応答の測定を行う上でデュアルソースメータを購入する必要がある。このため、これら構造解析・測定装置の購入費用、並びに本研究に関する成果の学会・論文発表を次年度に引き続き遂行することとした。以上のことから、今年度の未使用額はこれらの経費に充てることとしたい。 消耗品に関しては当初の予定通り半導体ウェハ及び原料ガスの購入を行う。また、デバイス応用の一つとして有望視されている太陽電池構造実現に向け、電流-電圧等電気特性を評価すべく従来の予定通り評価測定装置(デュアルソースメーター)を購入する予定である。さらに本年度は当初の計画以上に成果が産出されたため、次年度において国内・国際学会へ積極的に参加しまた論文に積極的に投稿することにより成果を広く公表する。そのため、国際学会の参加諸費用(渡航費及び参加費)や論文投稿の諸経費として研究費を充てる予定である。
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