本研究は半導体ナノワイヤを用いた光デバイス(単一光子発生・レーザ・太陽電池)実現に向けた結晶成長技術の確立を目的とし研究を遂行した。具体的には、研究代表者が前年度までに培ったナノワイヤ成長技術を元に今回の研究で用いたナノワイヤ量子ドット構造を実現する成長技術及び評価技術の確立を図るとともに、申請当初目的としていた単一光子発生器だけでなくレーザや太陽電池へのデバイス実現に向けたプロセス技術を確立し、デバイス特性の評価を行った。一方、ナノワイヤの成長メカニズムを詳細に調べ、ナノワイヤの寸法を完全制御することが可能であることを実証した。 本年度も昨年度に引き続き東大ナノ量子機構の特任助教として研究を進めた。本機構で最も実績のある量子ドット構造を本研究を達成するための基本構造として用い、ナノワイヤ量子ドットを有する光デバイス(太陽電池及びレーザ)構造の作製技術を確立すると主にそのデバイス特性の評価を行った。具体的には前年度培ってきたナノワイヤ積層量子ドット(60層)を有する太陽電池構造を作製し、1太陽光入射時の電流電圧特性を測定するとともにスペクトル応答特性を評価し、ドット構造に起因する光電流の増大を確認した。現在までのところナノワイヤ量子ドット太陽電池の変換効率は3.6%であり、この値は他のグループが報告しているGaAs系ナノワイヤ太陽電池と比較しても遜色が無い。また、均一なナノワイヤ量子ドットを作製する要素技術としてナノワイヤ形状の成長時間依存性を詳細に調べるとともに、その形状の振る舞いを拡散長及び付着定数を定義した気層拡散モデルを用いてシミュレートし、軸及び径方向の成長速度が高さ及び半径の関数として記述できることを見出した。一方、GaAsナノワイヤと銀フィルムを結合したプラズモン共振器を作製し低温でのレーザ発振を観測した。
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