研究課題/領域番号 |
23760297
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片桐 崇史 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90415125)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光デバイス・光回路 |
研究概要 |
本研究の目的は,中空光ファイバをコヒーレントにバンドル化した中空イメージガイドを開発し,充分な解像度を有するリモートラマン分光イメージング装置を実現するための指導原理を確立することである.目的の達成に向け本年度は以下の研究を行なった.1. Ag内装中空イメージガイドの製作ホウケイ酸ガラスキャピラリを束ねたプリフォームを加熱延伸することにより,母材キャピラリバンドルを形成し,無電解めっき法により該バンドル内壁に銀薄膜を成膜することにより,Ag内装中空イメージガイドを製作した.キャピラリ内の圧力抵抗により要素径が細いほどめっき液の送液が困難となる問題に対し,高速液体クロマトグラフィの送液系を流用した加圧めっきシステムを新たに構築することにより,目標とした要素径50 umのイメージガイドの製作が可能となった.また,母材製作工程においてキャピラリ内を加圧膨張させることにより空孔率を拡大する手法を見出し,空孔率93%以上の極めて高密度なイメージガイドが実現した. 2. 生体組織のラマン分光イメージング製作したAg内装中空イメージガイドを用いて,生体組織のラマン分光イメージングを実施した.ラインスキャン法を基礎としたイメージング測定系に,非球面レンズを具備したイメージガイドを導入し,筋組織と脂肪組織が混在する豚肉表面を測定対象とした.2次元位置情報と,フルスペクトル情報を有する3次元データキューブを取得し,脂肪のC-H伸縮振動とタンパク質のフェニルアラニンに起因するラマンバンドを指標としてイメージを構築した結果,筋組織と脂肪組織の境界を明確に識別可能なイメージを得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標の仕様を満たすAg内装中空イメージガイドが製作され,生体組織のラマン分光イメージの取得に成功した.一方, Al内装中空イメージガイドの製作は,MOCVD装置の立ち上げと,単一キャピラリを用いた試作にとどまったため,励起波長特性の調査は完結するに至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,研究計画に従い以下の検討を行う.1. 励起波長特性の調査Al内装中空イメージガイドを製作する.励起レーザ(266, 488, 532, 785)を用いて豚肉を評価用サンプルとしたイメージを取得する.得られたイメージよりSNRを相対評価し,短波長励起による優位性の有無,サンプルの自家蛍光による妨害の程度について調査する。2. 共鳴ラマン効果の調査生体分子の共鳴ラマン効果の研究において、最も多く研究が行われている発色団の中で、組織レベルのイメージ検出が期待でき、共鳴波長が異なる3種類の発色団(ヘモグロビン、各種アミノ酸、カロテノイド)に着目する。それぞれの発色団に共鳴する励起レーザにより評価用サンプルの共鳴ラマンスペクトルを取得し、最大強度を示すラマンバンドを選択する。現有の高速レーザ顕微鏡に中空イメージガイドを設置し、選択したラマンバンドをプローブとした高速ラマンイメージングを実施することにより、共鳴効果とスループットの限界との関連性を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き中空イメージガイドおよびラマン分光測定系構築に関連する消耗品を購入する.Ag内装中空イメージガイドの高性能化が必要であり,「ホウケイ酸ガラス母材」,「無電解メッキ用薬品類」が必要である.Al薄膜形成用の「MOCVD原料」は今年度も購入したが,次年度にも必要である.「光学部品」は光学フィルタ,レンズ,微動台,ステージ等の測定用部品であり,「電子部品」は,製作・測定装置の制御系に用いる.双方とも研究期間全体を通して必要である.次年度使用額は,当初計画していた励起波長特性の調査を次年度に延期することにより生じたものであり,延期した励起波長特性の調査に必要な経費として,平成24年度請求額とあわせて使用する予定である.
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