研究課題/領域番号 |
23760297
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片桐 崇史 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90415125)
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キーワード | イメージガイド |
研究概要 |
本研究の目的は,中空光ファイバをコヒーレントにバンドル化した中空イメージガイドを開発し,十分な解像度を有するリモートラマン分光イメージング装置を実現するための指導原理を確立することである.目的の達成に向け本年度は以下の研究を行った. 1. 可変帯域透過フィルタ(TBF)を用いた高速マン分光イメージング装置の構築 昨年度までに,断面にハニカム構造を有するガラスキャピラリ内面に銀薄膜を形成した中空イメージガイドを製作し,ラインスキャン法と組み合わせることにより高品質な生体組織のラマンイメージが取得可能であることを明らかにした.ラインスキャン法はフルスペクトルの取得が可能であるが,生体組織では1枚あたり約1時間の撮像時間を要する.また,今後更に高解像度なイメージを測定するためには,イメージングシステムのスループットの向上が必須である.そこで,本年度は,新たに帯域可変光学フィルタTBFを導入した高速ラマンイメージングシステムを構築した.TBFを2枚組み合わせることでスペクトル分解能を向上させ,CaCO3/TiO2混合粉末のラマンイメージを撮像時間30秒以内で取得することに成功した. 2. 表面増強ラマン散乱(SERS)活性ファイバプローブの製作と評価 スループット向上のためのもう一つの方法として表面増強ラマン散乱(Surface-Enhanced Raman Scattering: SERS) の利用について検討した.金ナノ構造体を形成したボールレンズを中空光ファイバの先端に装着することによってR6Gなどのラマン散乱光強度が著しく増強され,SERSによる増強効果を確認した.石英光ファイバと比較を行い,中空光ファイバを用いることで非常に低いバックグラウンドレベルを実現し,また,SN比の向上も可能であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度構築した測定系のスループットが低く,実験の効率に問題が生じたため,計画にはなかった高速ラマンイメージング装置を新たに構築する必要があった.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として研究のまとめを行う.ここで目的を達成するため,励起波長をこれまでに良好な結果が得られている785nmに固定する.また,生体組織の測定においては不要な自家蛍光が発生し画像コントラストが劣化する問題があるため,バックグラウンドの処理方法について検討する必要がある.さらに,解像度について深い考察を行い,提案する測定系における画質の限界について結論を導く.SERSの利用については,増強の要因として試料の吸着が重要であり,生体組織のラベルフリーイメージングには適さないことが明らかとなったため,生体分子の高感度検出等の応用について再検討することを今後の課題とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(\5,732)は年度末の学会参加費の処理が遅れたために生じた.引き続き中空イメージガイドおよびラマン分光想定系構築に関連する消耗品を購入する.Ag内装中空イメージガイドの高性能化が必要であり,「ホウケイ酸ガラス母材」,「無電解メッキ用薬品類」が必要である.「光学部品」は光学フィルタ,レンズ,微動台,ステージ等の測定用部品であり,「電子部品」は,製作・測定装置の制御系に用いる.また,最終年度のため,学会発表のための旅費と論文投稿のための費用の比率が大きくなる見込みである.
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