研究課題/領域番号 |
23760308
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
關谷 尚人 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (80432160)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 超伝導フィルタ |
研究概要 |
従来,超伝導送信フィルタはマイクロストリップライン(MSL)構造を用いられてきた.しかし,MSL構造を用いたデュアルモードフィルタは大きな耐電力特性を実現できるが,不要な飛び越し結合が強く小型化が困難であった.また,超伝導送信フィルタは,段数が増加すると共振器端部に集中する電流密度が増加し,耐電力特性が劣化する.そのため,できるだけ段数を少なくし急峻な遮断特性を実現することが求められる.しかし,MSL構造を用いたデュアルモードフィルタでは急峻な遮断特性を実現する楕円関数型フィルタを小型に設計することが困難であり,MSL構造を用いた超伝導送信フィルタの研究は限界に近づきつつあった. 本研究では,ストリップライン(SL)構造を超伝導送信フィルタに用いることを提案し,MSL構造では困難であった,デュアルモードフィルタの小型化と楕円関数型フィルタの設計方法の検討を行ってきた.SL構造はMSL構造と比較して共振器間の結合が大変弱いことを見出し,デュアルモードフィルタの不要な飛び越し越し結合を大幅に減少させることに成功した.それによって,従来のMSL構造を用いたデュアルモードフィルタと比較して,SL構造を用いたフィルタを約40%小型化できることを実験的に明らかにした.また,SL構造を用いたデュアルモードフィルタは共振器の摂動部の位置を変えることで容易に楕円関数型フィルタを実現できることを実験的に明らかにした.以上のことから,本研究ではこれまで困難であったデュアルモードフィルタの小型化を実現し,急峻な遮断特性を得られる楕円関数型フィルタを容易に実現したことによって,これまでで,最も小型で高い耐電力特性を有し,さらに,急峻な遮断特性を有する超伝導送信フィルタの実現可能性を実験的に明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は,超伝導体を用いる前段階として,常電体(銅,アルミニウム)を用いた市販の高周波基板を使用し,フィルタの設計方法や作製方法について予備実験を行うことで,超伝導体を使用する場合の指針を得ていた.そのため,平成23年度の研究目的および研究計画はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本申請者はストリップライン(SL)構造を用いることで低段数におけるデュアルモードフィルタの小型化を実現し,急峻な遮断特性を得るための楕円関数型フィルタの設計方法も確立した.平成24年度は提案するSL構造を用いたデュアルモードフィルタの耐電力特性を測定し,従来のMSL構造を用いたフィルタと比較してどの程度耐電力特性が優れているか考察を行う.また,デュアルモードフィルタを小型に設計できることを明らかにしたことから,さらに多段化を行い,8段デュアルモードフィルタの設計方法を確立する.その後,設計したフィルタを作製し,これまでで,最も小型で急峻な遮断特性を有し,高い耐電力を有することを実験的に明らかにする予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度予算で購入予定であった耐電力測定系に必要な高周波信号発生器を当初予定していた信号発生器(仕様:アジレント製,1 KHz~6 GHz)をリファービッシュト(再生品)信号発生器(仕様:アンリツ製,0.1Hz~20 GHz)に変更した.リファービッシュト信号発生器は計測器販売大手のアンリツ(株)が全学出資会社であるアンリツ興産によって修理・校正が行われており,アフターサービスも充実していることから,新品と同様に使用することがでる.また,リファービッシュトであることから,申請していた信号発生器よりスペックの優れた製品を申請価格より安く購入できる.安く購入したことによって発生した残りの予算は,24年度の予算と合わせて本研究を遂行する上で必要な高利得の信号増幅器の購入に使用する予定である.現在所有する信号増幅器は20 W程度までしか測ることができない.本申請者のこれまでの予備実験では,SL構造を用いたデュアルモードフィルタはすでに19 Wの耐電力を得ており,薄膜の品質などを変えることでさらに高い耐電力が得られると考えられる.よって,限られた予算で従来申請していた以上の性能の信号発生器を購入することができ,なおかつ,高利得の信号発生器を追加で購入できることから,本研究のさらなる発展が期待できます.
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