研究課題
新型構造の設計、特にヘテロ構造の設計は本研究の成否を左右する。傾斜ミニバンドは、各井戸層の電子の準位を徐々に変えることにより得られ、井戸層と障壁層のバンドギャップ、厚さを変えることで可能になる。従来型GaAs/GaAsP超格子型フォトカソードに対して、本研究ではAlGaInAs/AlGaInP超格子構造を用いる。AlGaInAsとAlGaInPは両方とも4元混晶材料であり、その特徴は、格子定数、バンドギャップを独立的に制御することができる。Model-solid理論とKronig-Pennyモデルによりミニバンド計算を行い、超格子層の組成と層厚を決めた。 フォトカソードの作製は有機金属気相エピタキシャル成長法(MOVPE)により行う。AlGaInAs、AlGaInP材料系をGaAs基板上に成長し、その後、X線回折法、フォトルミネッセンス法により結晶性評価を行い、最適な成長圧力、成長温度、成長速度、III族原料とV族原料比などを決定する。その後、1段階で設計されたAlGaInAs/AlGaInP超格子構造の作製を行った。 実際作製したフォトカソードは、TEM観察を行う。超格子構造では、急峻な界面、組成分布などの問題が予想される。また、本計画では超格子の層厚と組成を変化する構造を作製するため、層厚と組成の確認が重要である。それで、TEM観察により、超格子の層厚を確認し、さらにEDX測定により超格子各層での組成の分布を調べた。作製した試料は、量子効率がバンドギャップ付近で、0.4%であり、これは従来のGaAs型のフォトカソードの0.1%により、4倍の大改善である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、新しいGaInP系材料を用いた電子源を開発を挑んだ。新型構造の設計、特にヘテロ構造の設計は本研究の成否を左右する。従来型GaAs/GaAsP超格子型フォトカソードに対して、本研究ではGaInP/AlGaInP超格子構造を用いた。GaInP/AlInPその特徴は、格子定数、バンドギャップを独立的に制御することができる。Model-solid理論とKronig-Pennyモデルによりミニバンド計算を行い、最適な超格子構造を決定し、作製を行った。 作製した新しい試料では、バンドギャップ付近での量子効率が0.4%であり、これは従来のGaAs型の量子効率に比べて、4倍の大改善である。GaInPの材料系を電子源に用いるのは世界中初めてであり、十分の高性能を示している。 今後この成果をベースに短パルスト低エミッタンスの測定を行う予定であり。
今後この成果をベースに、フォトカソードのパルス実験をKEKの装置で行う。~100 fsパルス幅のレーザを励起光として、取り出した電子ビームを時間分解することにより、ビームの幅と電荷量を測定する。 その後、Mn、Feなどが挙げられ、これらはにより添加可能である。先に、GaAs基板上に違う密度のMn、Feを添加したGaAs層を成長する。成長した試料は、時間分解フォトルミネッセンス法により、電子のライフタイムの測定を行う。電子のライフタイムが短いほど、添加した材料による電子の除去効果が有効であることを示す。これより最適な添加材料とその密度を決める。 最後に、AlGaInAs/AlGaInP超格子構造を作製し、その後上の段階で決定した材料系を添加したGaAs表面層をMOVPE成長法により作製する。作製した新しいフォトカソードのパルス実験はKEKで行う。
平成24年度交付額と、平成23年度からの繰越額をあわせ、下記のとおり経費の執行を計画している。東京での成果発表(東京2日間、2回)と韓国釜山で開けるICMOVPEへの出席しと、研究成果発表する。KEKでの実験出張する。 (20日間)有機金属原料TBPの購入する予定である。
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J. Phys.: Conference Series
巻: 298 ページ: 012011
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